第20話 二人でショッピングに出かけたら、会社の元カノ?に会った!

一緒に住んでもう1か月位になる。いままで二人でショッピングにも出かけたことがないので、二人で街中へ行ってみたいと思った。まあ、デートするようなものだ。


いつも家で話していて、マンネリな感じがしてきた。たまには二人に気分転換も必要だ。確か来週の11月24日(金)は理奈の誕生日と聞いている。29歳の誕生日だ。


「明日の土曜日、二人でショッピングにでも行ってみないか? 理奈さんの誕生日は来週だったね。婚約してから何もプレゼントをしていなかった。誕生祝いに何かプレゼントをしたいと思っている」


「高価な婚約指輪をいただきました。それで十分です。それに私のお願いを聞き入れてもらっているので、気が引けていただけません」


「僕は理奈さんにブレスレットをプレゼントさせてほしいしいと思っているんだ。きっと似合うと思う」


「それほどまでおっしゃるのなら、お受けします」


「じゃあ、明日買いに行こう」


「私もお洋服を見たいので出かけましょう」


場所は理奈の希望で原宿と青山へ行くことになった。ネットでアクセサリーショップやジュエリーショップを調べておいた。


◆ ◆ ◆

(11月第3土曜日)

2軒ほど周ると気に入ったものが見つかった。理奈も気に入ってくれたので、それを買って、その場でプレゼントして、着けてもらった。理奈はまんざらでもなさそうで、機嫌がいい。


その足で、青山通りのブティックをウインドウショピングして歩く。理奈は気に入った店があると中に入ってみている。僕が一緒に入るとゆっくり見られないと思うので「ゆっくり見て、外にいるから」と言って中には入らない。


丁度、隣がスポーツショップなので、面白いものがないか、中を覗いていた。


「吉川さんじゃありませんか?」


突然、声をかけられた。女性の二人連れだった。すぐには誰だか思い出せなかったが、会社の女性だと分かった。ひとりは広報部の山本さん、もうひとりは総務部だったか、名前が思い出せない。


「ああ、山本さん」


「どうしたんですか? お一人なら私たちとお茶しませんか?」


「ありがとう、せっかくだけど、待ち合わせをしているんだ」


「彼女ですか?」


ここで理奈を紹介する訳にもいかないので、とっさに思いついた。


「いや男の友人だ。スポーツ用品を買いたいから一緒に見てほしいと言われて。少し早く着いてしまったので、待っているところだ」


「そうなんですか。せっかくこんなところでお会いできたのに残念です。じゃあ、また」


二人は理奈の入っていた店へ入っていった。


理奈は少し前に出て来ていた。僕が山本さんと話している時に出てきた。彼女もまずいと思ったのか、隣の店のウインドウを覗きながらこちらを覗っていた。


山本さんたちがショップに入ったのを見届けると、理奈に合図して、足早にそこを離れた。理奈はすぐに追いついてきた。


「素敵な方ですね」


「会社の女性だ。二人でいるところを見られなくてよかった」


「見られてもいいじゃないですか?」


「社内で言いふらされるとうっとうしい。根掘り葉掘り聞かれるし。そこの店で一休みしよう」


コーヒーショップがあったので、すぐに中にはいった。歩いていてまた会わないとも限らない。少し時間をおいてやり過ごしたい。理奈は不機嫌そうな顔をしている。ブレンドコーヒーを二人分注文する。


「意外とモテるんですね。素敵な女性でしたね。歳は私と同じくらいでしょうか?」


「そうだね、同じくらいだと思う」


「彼女は亮さんに好意を持っているように見えました。これは女の感ですが」


理奈は気になるのか食い下がってくる。確かに彼女は僕好みの美人だ。


「彼女とそばにいた女性、二人は同期だ。僕が本社に来た頃、僕は30歳位で、彼女たちはその年に入った新入社員だった。僕の同期の誰だか忘れたけど、音頭をとって、合コンをした。僕も誘われて参加した」


「結構、積極的だったんですね」


「丁度、本社に来たばかりで物珍しさもあってね」


「その時知り合ったのですか?」


「可愛い子だったので、思い切って食事に誘ってみた。そのあと2~3回食事に誘ったり誘われたりした。月に1回ぐらい、付かず離れずの関係かな、お互いにフリーで、付き合っているというより、その一歩手前の友達みたいな微妙な関係だった」


「ありえますね」


「彼女にはほかにも男性の友達がいたみたいだった。だから僕はOne of Them だったと思う」


「彼女のことどう思っていたのですか?」


「見てのとおり男好きのするタイプで可愛くてチャーミングだった。東京出身で東京の有名私立大学を出ている。実家から通っているので、経済的にも余裕があるように見えた。僕には少し生活が派手な感じがして付き合うのは大変かなと思っていた」


「確かに、実家から通っている娘は経済的にゆとりがありましたね。大学でも勤めてからも」


「まあ、それで夢中になることもなかったのかもしれない。彼女も追っかけてくると言うタイプではなかった。まあ、僕にもその程度の魅力しかなかったということだ。徐々に疎遠になった。別れたというほどの関係でも元々なかった」


「何となく感じ分かります」


「今思うと、その時彼女は20代前半で、まだ就職したばかりで、ベストの相手を求めて、いろいろ付き合ってみていたのではないかと思う」


「そうですね、私も20代前半ではまだ結婚はないと思っていました」


「お見合いの時だったかな、『秘書問題』や『裁量選択問題』と呼ばれる理論分析が、お見合いにも応用できると言う話をしたのを覚えている?」


「興味深いお話だったのでよく覚えています」


「彼女から見れば、その時の僕は最初に見送るという全体の37%に入っていたのだと思う」


「もったいなかったですね。今の彼女なら、37%よりも良い人が現れたらその人に決めるというその人に亮さんがなっていると思います」


「そうかな? 出会う時期が早過ぎた? いや遅過ぎた? 出会いの時期もご縁なのかもしれないね」


「よく考えてみると、私にも当てはまることだと思います」


「それを聞いて嬉しい。今日、プレゼントを買いに来たかいがあった」


理奈のご機嫌斜めはもうすっかり治っていた。また、ひとつ理奈と気持ちを通じ合えたような気がする。

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