うちらはティエンフェイ!

早藤 祐

2020年1月 神戸総合大学深江キャンパス女子学生寮食堂

 ヴォーカルの摩耶まーやが病気治療で一時的に歌えない。その間にある大学祭のライブ出演のため助っ人ヴォーカルとしてミフユが見出され押し切られて引き受ける羽目になった直後の女子学生寮食堂。またまたミフユが淹れたコーヒーと中谷なかたにさんが珍しく気を利かせて供出したチョコレートを食べながらバンドの面々と話をしていた。


 ミフユはふと気になって聞いた。


「ねえ、バンドの名前だけど何故ティエンフェイなの?」


 中谷なかたにさんが怪訝そうに答えた。


「古城さんにまだ話してなかったっけ」


 そりゃ、今、入るって決めたんだから知るわけないでしょうがといささか呆れるミフユ。


 西田にしださんがチョコを中谷なかたにさんから奪いながら言った。


中谷ちゅうやちゃん、ガサツだからさ。……ちょっと中谷ちゅうやちゃん、もっとチョコよこしなよ。あ、私の事は摩耶まーやでいいから。こいつは中谷ちゅうやちゃんって悪意込めて呼んであげてね」


なんという毒舌。幼馴染だから遠慮がお互いにないからとは後で聞かされた。


 比嘉ひがさんは苦笑して言った。


「古城さんはなんて呼べばいい?あ、私は『ふみよ』だから『ふーちゃん』でいいよ。北見きたみ先輩は朱里しゅり先輩でも良いって」


 頷く北見朱里きたみあかり先輩。


「私はみんなからは冬ちゃんとかミフユって呼ばれる事が多いのでどちらでも」


『じゃあ、冬ちゃんだね』と四人から言われた。


 北見きたみ先輩はコーヒーを美味しそうに一口飲んだ。


「ティエンフェイはねえ。漢字で書いたら天の妃なんだけど、とある場所の名前なんだ」

「お店?」

「ううん。この四人でやったろうぜと中谷ちゅうやちゃんが叫んだ時の場所の名前。そもそも私が性格悪かったかな、これは」

「なんか凄そう」

「ま、このメンバーになった経緯は紆余曲折まではしてないけど、色々あったからね。だいたい1回生で自分達メインでバンド作らせろって言い出したのは早々いないからさ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る