てのひら都市伝説
たいらひろし
歯磨き粉の相性
あなた、毎日歯磨きはしてる?
うん、そりゃするよね。でないと虫歯になっちゃうもんね。
虫歯は怖いよ。痛みはもちろんだけど、歯茎が溶けて下がってきたり、ひどい口臭に悩まされたりするもん。場合によっては入れ歯すら使えなくなるほど歯茎が痛むこともあるんだって。歯は一生お世話になるものだから、大切にしたいよね。
ちなみに、当たり前だけど歯磨きに使うのは歯ブラシと、あと歯磨き粉だよね。
あなたはどんな歯磨き粉を使ってるかな。
え、覚えてないの? 薬局で適当に目についたものを選んだだけ?
まあ、そういうものかもね。素人目にはどの歯磨き粉が高品質かなんて、値段くらいでしか判別できないもんね。
で、変なことをきくようだけどさ。歯磨き粉って、一種類しか使ってないよね?
…………。
だよねぇ。普通は歯磨き粉なんて一種類だけしか使わないもんね。
ん。なんでこんなことを質問したかっていうとね。とある二種類の歯磨き粉を混ぜてから歯磨きに使うと、歯によくないらしいのよ。
その歯磨き粉は『■■■』と『▲▲▲』っていうんだけどさ。どっちもチューブタイプで、ワンコインで購入できるお手頃価格。だれでも一度は耳にしたことがあるんじゃないかな。ゴールデンタイムにテレビのコマーシャルでよく流れてるしね。
んで、どう歯によくないかっていうと……溶けちゃうらしいのよ。歯が。それもいきなり溶けるんじゃなくって、歯磨きを終えて数日が経過してからじわじわと歯が蝕まれていくみたいなのね。もう数日も過ぎていたら歯磨き粉なんて口内には残っちゃいないはずなのにさ。
その歯磨き粉の名誉のためにいっておくと、もちろんそれぞれの成分にはもちろん有害な物質なんてないよ。それに、それらを混ぜ合わせたくらいで、危険な化学反応なんて起きるはずない。そもそも歯磨き粉の成分なんて似たり寄ったりだもん。にもかかわらず、『■■■』と『▲▲▲』を混ぜたとたん、歯を溶かしてしまう危険な歯磨き粉に早変わりしてしまうってわけ。
いったいどういう因果関係にあるんだろうね。
ちなみに、『■■■』を開発したR社と『▲▲▲』を開発したK社は、業界では犬猿の仲で有名なんだって。化粧品や日用品のシェアを巡って熾烈な争いをしているんだから当然かもしれないけれど、それにしたって社長や取締役、会長たちも、理屈で説明がつかないほどお互いに仲が悪いんだって。それどころか両者の仲の悪さはR社とK社の社員たちにも波及しているらしくって、もはや源氏と平家みたいな関係にあるらしいよ。
そういう結びつきが、いまや二社の商品まで巻き込んじゃってるのかもしれないね。
そうそう。その二社はほかにも化粧品や洗剤を販売しているんだけどさ。
今度、一緒に混ぜて使ってみない?
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