第70話

みさき先輩は、僕が化け物である事を知らない。

もし、キスした後に僕が化け物である事に気付いたら……


心に大きな傷を負ってしまうだろう。

それだけは、どうしても避けたい。



「本当にやってないのか?

 でもま、あの美人とハグできたのだから次は、キスだな!」


「しないよ……」


「付き合ってるんじゃないのか?」


「付き合ってはいないよ……」


「でも、好きなんだろ?」



好き……?

好きなのかな……

それは、良くわかんない。



「わかんない。

 あの人の事を考えるとドキドキする」


「ばぁーか。

 それが、好きって事なんだよ!」


「そうなのかなぁー」



好き?

僕が誰かを好きになる?

それは、絶対にやってはいけない。

だって僕は、化け物だ。


化け物が恋したら、化け物も好かれた方も傷つく。


だから、僕は、恋をしてはいけないんだ……


僕は、僕に言い聞かせた。

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