第13話・イシュリンはアキを説得する

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 アキは、次のターゲットとなる町を遥か下にして空(くう)で立っていた。


 イシュリンたちは会話を直接するために、アキから離れた場所に転移して現れると、さらに浮遊して百メートルの距離をおいて止まった。


 アキはそこまで接近してきたことで、少しの間、彼らに付き合うことにした。


「お前がイシュリンか」


 中央で立つ者に尋ねると、


「そうです」


 冷ややかな黒い瞳に、空のように澄んだ青い瞳が答える。


「憂理はどうした。私の妃を返しに来たのではないのか」


「彼女はあなたの凶器にさせないよう、私たちが保護しています」


「保護だと? 物は言いようだな」


 アキは鼻で笑った。


「あなたもです、アキ皇子(おうじ)。魔力で町を破壊してはいけません。もうこれ以上、無力な人々を苦しめないでください」


 イシュリンは体の側面に手を下ろしている。

 手のひらを見せて強い攻撃をすることから、あえて手の甲を向けており、非戦の気持ちを示した。


「アキ皇子、あなたも知っているはずです。魔力は人を支配するためにあるのではありません。誤った使い方をし続ければ、ネイチュは森に覆われて人が住める場所ではなくなるのです」


「その方が都合がいい。力の弱いものは我々アルマの統治を喜んで受け入れるだろう。アルマなしでは、もはや生きられない存在なのだと愚か者でも思い知る。お前とレジスタンスを除いて」


「アキ皇子、わかってもらえないのなら……。私たちは抵抗を続けることになります」


「やってみろ」


 アキの目が光る。


 ワイクは目を潰され、のけぞった。


「ワイク!」


 飛翔が素早く寄って彼を支えた。

 アキに顔を向けようとした。


「見るな!」


 視線をイシュリンに手でさえぎられた。


 アキは光る目で見たが、イシュリンには効かない。


 イシュリンは、ただふたりをかばってアキを見つめ返した。


「お前を殺す」


 アキは薬指に金の指輪をはめた左手を、手首で右手と合わせ持ち上げる。

 魔力を集中させる。


 腰まで伸ばした黒髪がゆっくりと広がり、黒いはずの瞳が緑をおびる。


 イシュリンに向け、手のひらを開いた。


「飛翔、私の後ろに入るんだ!」


 次の瞬間、凄まじい光と衝撃がイシュリンに襲いかかり、ガン!と存在を砕くはずの音が空に響いた。





 〈続く〉

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