第48話 強引なのはイヤ。

「また会わなくちゃいけないのかぁ。それにまだ会わなくても…。」

瑠奈はため息混じりに言う。


成人式から数日後のこと。親に会って欲しいと学が言いだしたのだ。

半ば押し切られる形で結婚の約束をしたのは良いが、学の母、櫻に会うことを思うと気が重い。あの日の“何よ、この娘!”といわんばかりのあのオーラが実に恐ろしかったのだ。


「大丈夫だよ。」

「だって、ウチの親は教師だとか、あのときはデタラメ言ったし。やっぱり早すぎるよ。」

「少しでも早く結婚するの!早い方がいい。」

「卒業と同時とか、あり得ないよ。」

「…イヤなの?」

「強引に推し進めることがイヤ。この先が不安。」


確かに、あのスッポンポンプロポーズ以来、学は暴走しそうな勢いが続いている。瑠奈としては、愛されている感がないわけではないが、明らかに舞い上がっていることに不安を覚えるのだ。

「…ごめん。じゃあ、瑠奈はどうしたいの?」

「卒業するまでは、口約束も内緒。最初に言ったはずよ。」

「そうだった。ごめん。」

「就職して、社会にだって出ておきたい。それに、学って、そんなにせっかちじゃなかったよね?」

ごもっともと、学はうつむく。


学はもともとゆったりと余裕のあるタイプである。しかし実のところ、拓也の存在がどうしても気掛かりなのだ。瑠奈に近づかないことは継続中とはいえ、瑠奈の対応は多少は緩和されているし、拓也からは、その後の恋の相談や報告がないので、まだ瑠奈に対する気持ちがあるのでは、と心配なのだ。


夜も更けてきた頃、学は佳奈のスマホを鳴らした。

「姉貴?今、話せる?」

「いいわよ。何かあったの?」

「実は…。」


学は姉の佳奈に、瑠奈とのこと、結婚のこと、拓也への不安を話した。

「ふー…ん。瑠奈ちゃん、やっぱりモテるのね。まあ、お友達がどう思っていても、瑠奈ちゃんが相手にしてないなら、関係ないと思うわよ。それに、社会に出たいと言うのを学がストップをかけることは賛成できない。」

「そうかな…。」

「社会経験がある方が、何かと良いわよ。将来の社長夫人だもの。それに、アンタが焦る方が良くないことになると思うわよ。それにしても、そんな余裕のないことって珍しいわね。」

「うん。…余裕ない。不安なんだ。早く確実なものにしたくて。」

「お母さんよりも、私に会わせてよ。ゴハンの約束だってまだ実現してないし。ねっ。そうしましょ!」

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