第8話 明日が怖い。
「何か?」
目が点になった拓也に、瑠奈が声をかける。やっと目を合わせたと思ったら、この一言である。
「瑠奈ちゃん、結構イケるんだね。」
「ええ、まあ…。」
普通なら、この飲みっぷりすでに気分が下がってしまっているだろう。しかし拓也にしてみれば、やっと口をきいてくれた喜びの方が大きいのだ。学にしても、瑠奈がそこまで不機嫌になるとは思っていなかったので、ホッとしている。
拓也の名誉のために説明しておくと、拓也はいかにも人当たりの良さそうなタイプだし、顔立ちもなかなか悪くない。ただ、瑠奈が興味がないので、とことん無愛想なのである。
口をきいたと思ったら、いつものペースで食べ始めたので、拓也はさらに驚いている。ビールも学や拓也のペースに遅れをとらず。そんなわけで、拓也は瑠奈に驚かされっぱなしである。瑠奈は口数は相変わらず少ないが、酒の力で多少の会話はできるようになっている。
「瑠奈ちゃんって俺のイメージと全然ちがったから、びっくりだよ。」
拓也がつい本音を口にした。
「はぁ?イメージ?私はね、このまんまなの!勝手なイメージ持たないでください!」
「言うねえ。」
苦笑する拓也に学が追い討ちをかける。
「フン。目が覚めたか。だから言っただろが。」
「ハハハ!瑠奈ちゃんといると飽きないよ。」
「拓也〜。お前は懲りない奴だな〜。」
「瑠奈ちゃ〜ん!今度は
「いやです~!」
瑠奈は酔っぱらって、少々テンションが高い。
「どーしてー?」
「人見知りだからでーす!」
「今日から知り合いだよー?」
拓也は次の約束につなげようと、こんなやりとりを何回か試みたが、酔っぱらってもココは変わらないようだ。
「しつこい人は苦手でーす。ごちそうさま~。おやすみなさーい!」
最後にはこう言って、一人で帰っていってしまった。
「学、ありがとな。瑠奈ちゃん、イメージとは違ったけど、面白い!」
「お前、ホントに変わってんなあ。」
「決めた!瑠奈ちゃん気に入った!」
「ハイハイ。じゃあ明日、学校でな。」
「おう。おやすみ!」
「げ!」
学は駅で拓也と別れてからLINEを見て思わず声を上げてしまった。焼き肉屋にいる間に瑠奈が入れたメッセージを今さら読み、明日が怖くなった学であった。
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