我ら農業高校園芸科!
秋の桜子
第1話キホンノ基本
温暖化の煽りを受け4月の半ばの辺りには葉桜となってる春のある日、めでたく私は第一希望の高校の制服に袖を通していた。
某地方の農業高校園芸科!一般入試倍率、どどーんの女子に限り3倍を突破した私!名前は早瀬 かおり、明日から片道1時間掛けての自転車通学待ってます!
「はぁ、あの入学式辺りの元気が欲しい」
5 月の終わり、夏休みもまだまだ先というのに、ヘロヘロになってるのは私だけではない。
クラスメートほぼ全員がそう思っているのは間違いない。電車通学の友もそうぼやいてる、毎日、毎日、ぶちぶちと、
何故なら、何故なら「当直実習」なるものが私達の最初の試練なのだ。
学校は普通の高校と変わらぬ始業時間だけど、その前に1時間半前に各科目の実習棟に集合し、早朝実習が待ち構えている。部活動でいう「朝練」みたいなの。
放課後は授業後2時間みっちり実習、土日祝日、主に午前中実習作業をこなす過酷な1週間が周期的に回ってくる。
勿論、授業でも作業してわるわよ、まだ一年生だし、入学したばかりだから、簡単な事しか出来ないけど、
それにしても農業高校の毎日、慣れぬ1年生は過酷だ!先ず私は迷子になった!
無数に有るハウスの位置と栽培作物覚えきって無いから、大変な目にあってしまった。
広い、ひろーい高校敷地、各科目の実習棟が農地の中に点在し、校舎から先生達は実習棟に向かうのに、自転車か軽トラで移動するという卑怯な事をやっている!
私達は足で移動よ!その距離を!1番遠い果樹園なんて、敷地外!1度校門出てから、横断歩道を渡り、
そこから両脇をフェンスが設置されてるコンクリートの一本道を先ずは「造園科」の盆栽やら庭木ゾーンを左右に眺めつつ進むと、どん詰まりに「果樹園」が存在しているの。
そこに「園芸科果樹園実習棟」なるものが建てられている。とにかく遠いー!
移動時間なんてみてくれて無いわよ。学校は無情なんだから、普通の休み時間を着替えて移動時間に充てるのよ。
何処にたどり着くにも遠いー!実習の時作業を共にする先輩に聞くと、
「この高校で生き延びるにはキホン体力」
体力って生き延びるって?先輩、黒く笑わないで教えて下さい。と思った時、それより恐ろしい基本があると、先輩が教えてくれる。それは、
「時間厳守」
それは遅刻厳禁の校風にふさわしい御言葉
何でも早朝から始まる当直に3回遅れると「無期限当直」なるものが待ち構えてるから気をつけて、とフフと笑う先輩、
「無期限は恐いわよ、いつ終るか分からない早朝実習、放課後実習、担当講師の御許しが出るまで永遠に逃れられない、もちろん土日祝日関係無いわよ」
ひー!それは恐ろしいです。先輩はなったことあるのですかの質問に
「今、正にその真っ只中」
フフ、フフ、と闇の微笑みを浮かべていた、目の前の先輩。
私は決意した!絶対に遅刻しまいと、そうなれば5時過ぎに家出なくては、出なくては!
何故なら作業着に着替える更衣室から何処の実習棟も離れてるー!遠いぞー!
農業高校園芸科1年生、先ずキホンノ基本は
「時間厳守」
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