1章4話 神様からの贈り物について(1)
こうして、2人はアルベルトの自室でバッティングを果たした。
そして今、アンナは制服を着直している。
アルベルトは彼女を見ないように、外を向いているようにお願いされた。が、窓に反射して彼女の着直しの姿はまる見えだった。
罪悪感がなかったわけではない。しかし、彼の方だって負けられない理由がある。今回の件は完璧に向こうが頭おかしいので、バレなければ敵の筋肉の付き方ぐらい把握してもいいだろう、と、彼は考えた。
下着の色は上下セットで、ともに水色だった。恐らく、トップバストは95cm前後だろう。
ブラジャーのホックを留める時、アンナがかなり前屈みの姿勢になった。すると、巨乳と表現するしかない彼女の胸が、それこそ熟した食べ頃の果実さながら、たわわに実ったように垂れてしまう。
(んっ? おかしい。大胸筋はパッと見、一般の学校の生徒なら上の下、この学園の生徒なら中の上ぐらいで問題はない。けど、問題は脚の筋肉で――)
前述のとおり、水色のパンツをアンナは穿く。
可愛らしい曲線を描き、プニプニと肉感的に膨らんでいる白くて滑らかなおしり。それを後ろに突き出して、「んっ、しょ」と年齢の割に幼い掛け声と共に両脚に通したパンツを上げる彼女。
続いてアンナがニーソックスを履く前に、アルベルは彼女の生脚を確認した。
数秒後、彼女はニーソックスを履き終える。それが肉付き良好な太ももに喰い込んで妙にエロ可愛い。そう、太ももはかなりやわらかそうで、いかにも触ればフニフニしそうで間違いなかった。
(おかしい……。数秒しか確認できなかったけど、胸や腕の筋肉を比較して、脚の筋肉がなぜか鍛えられていない。それも、誤差とかそういうレベルではない。十中八九、移動に関する神託者だからだと思うけど……)
余談だが、背後で後輩が生着替えしているというのに、少なくとも表面上、一切の動揺、狼狽が見えないのは、彼の冷静沈着を常日頃から強く意識している、一見謎にしか思えない努力の
「コーヒーとミルク、どっちがいい?」
「ミルクでお願いします。温めたあと、メチャクチャ甘くしてください!」
「……角砂糖とシロップ、どっちだ?」
「角砂糖を3つ、シロップは2つでお願いします!」
「ハァ……、今、この瞬間だけは、溜息を吐いてヤレヤレと言っても許してほしいものだ……」
「うぐ……、す、すみません……」
数分後、完璧に制服を着直したアンナはアルベルトのベッドに腰かけて、ミルクをもてなされていた。
一方で、部屋の主は壁に背を預け、コーヒーを飲みながら無礼な来客のことを静かに観察する。
「で、だ。決闘関連のことを話し合う前に、君にはどうしてこの部屋に入ろうと思い、どうやって実際にこの部屋に入ったのか。建前でいいから、理由と方法を説明してもらおうか」
「えっ……と、ですね、アタシもこの寄宿舎に今年度から住むことになったんです。けど、帰宅しようとしたら鍵が開かなくて、仕方がないので自分の神託を使って入りました」
「先ほども言ったがここは俺の自室、408号室だ。君の号室は?」
「すみません……、508号室で、1階下にズレてしまった感じです……」
「君が508号室の住人というのは本当か?」
「えぇ……、これに関して言えば、アタシだってビックリしました」
帰宅しようとしたら鍵が開かなかった、というのはウソだが、驚くべきことに、アンナの自室がアルベルトの真上にあるというのは本当だった。
普通に考えてこれを利用しない手はない。
しかし、発言の半分が本当だとはいえ、彼女の罪悪感がなくなるわけではない。
やり遂げなければならないことがあるのは事実。そのためには多少の必要悪だって認めるつもりだった。けれど、やはり1つのことに集中しているだけ、周りがきちんと見えていないだけなので、割と深い罪悪感を本人は覚えているようである。
爪が白い肌に喰い込んで赤く充血するぐらい、アンナは強く手を握った。
「なら、次に方法を説明してくれ。神託を使った、と、言ったが、一応対策を打たないといけない。誰にでも真似できる方法ではないにしても、だ」
「いえ、そこまで誰にでも真似できる方法ではないと思います。少なくとも実際にやってみたアタシが考える限り」
「――と、言うと?」
「アタシの神託は〈
「つまり――」
「はい。どうしても部屋に入れなかったから、一旦地上に戻って、自分自身を光に変えて、この部屋のベランダに光速移動。さらにもう一回、自分自身を光に変えて、窓を透過して入室、って」
「厳密にはテレポートではないが、人間の動体視力基準で考えれば実質、テレポートとしか認識できない移動効果。加えて、透過率の高い物をすり抜ける効果を持つ神託、か」
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