35.テキーラは夜に呑め

「瞳は酔っ払うとどうなるんだ?」

 何気なく、千也が尋ねた。

「あんまり酔わないわよ。テキーラでも呑んだら別だけど」

 それを聞いた千也はいそいそと酒屋へ出かけテキーラを購入した。

 そして、夜。

「買ってきたんだ。折角だから一緒に呑もう」

 トクトクと千也がついだお酒を瞳はおいしそうに呑み干す。

 わくわくしながら瞳を見つめるが、普段と全然変わらない。

「どうしたの?」

「酔わないのかなあって思って」

「もっと呑まなきゃ無理よ」

 そこで千也は瞳のグラスを満たす。

 そんなことが繰り返され、やがてボトルは空になる。

 千也の買ってきた上等なお酒は、ほとんど瞳の胃に納まった。

 しかし瞳に変化はない。

「じゃあ、そろそろ寝ましょうか」

 つまらなそうな千也の背に、瞳はにやりと笑って言った。

「ごちそうさまでした」

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