第2話
○
うちの社内には塾のようなものがある。業界の専門的知識を取得する為に、基礎からしっかり学ぶ場所だ。本社から講師が来ている。
新入社員は現場実習に行く前に、ここで最低限の基礎知識を学ぶ。
しかし新入社員が学ぶのはあくまでも最低限の基礎だけだ。配属が現場になった者は、更に広く深く学ぶコースを受講する。
僕は中途入社ですぐに現場配属になった。入社して大分経ってからその塾に行った。基礎コースから中級・上級コースと徐々に難しくなっていく。
基礎コースは難なくこなせたが、中級コースの後半から難関だった。例題で出される問題が、中々解けなくなっていく。一緒に受講している他のメンバーも同じで、皆先生に叱咤されながら解答方法を探し出す。
椎名さんも中途入社らしい。現場の仕事も慣れてきたので、先日椎名さんもその社内塾の基礎コースを受講した。
僕達のいる職場は比較的新しいチームで、まだ塾に行っていない人が結構いる。
基礎コースを受講していないとどうしても専門用語が通じなかったりするので、なるべく早くみんなに受講してほしいのだが、業務スケジュールの都合上中々そうもいかない。
基礎コースを学んだ椎名さんとは自然に専門的な話が出来るようになり、仕事がやり易くなった。
一緒になる時間が増えて、時々業務以外の話もするようになった。
驚いたのが、椎名さんは時々、受講する訳でもなくただ単に社内塾に遊びに行っているらしい。
あの塾で学んだ者は殆どが、あの先生には極力会わないようにしたい、と思うのに。
勉強内容が元々難しいのだろうが、先生の教え方も親切ではない。
僕達は一週間や二週間と、期間を決めて各コースを受講する。その間の僕の仕事は残った現場のメンバーで補う。理解していないからと、延長する事は出来ない。その時は自主的に居残り勉強をする。限られた時間の中で教えるので、先生も必死なのだろう。口調が厳しく物凄いプレッシャーを与える。
女性に少し甘いという話を聞いた事があるので、女性陣には時々キャッキャッと云われているらしいが。
「あの先生とどんな話をするの?」気になったので尋ねてみた。
「他愛無い話だよ、仕事でこんな事あったとか、先生が部下と飲みに行ったとか」
○
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます