第10話 フラグが立ったらしい
ー 次の日 ー
妹の作った朝ごはんを堪能し、支度をして妹を送り、今は電車の中にいる。
ここまでは昨日とあまり変わっていないが、電車の中は昨日と状況が変わっていた。
(あ、暑いし、人多すぎるだろ!)
昨日までは混んでも満員電車のようになることなどなく、つり革や席には余裕が見られていた状況だった。
が、今は完全な満員電車だ。
俺は扉の側の席に座っていて、窓の外を眺めていたが、ふと、お年寄りのおばあちゃんが入ってきたことに気付いた。
おばあちゃんは、オロオロとしていたので、日本人らしく声をかける。
「おばあちゃん、どうぞ、席にお座り下さい。」
「どうも、ありがとうね!若いのに偉いね。」
「いえいえ!」
俺は立ち上がり、ちょうど近くに出来たスペースに移動した。
良いことをしたので清々しい気分だ。
(ん?今日は、高校生が増えたな?)
同じ高校の制服を着た人や、昨日まで見なかった他校の生徒も大勢乗っていた。
(同じ方面の高校生、結構いたんだな。友達でも出来れば、登下校一緒に帰れるんだけど。)
そんな事を思っていたら、俺の周りにいた女の子たちが両手を上げ始めた。
…多分だが、痴漢しませんアピールだろう。
(女性が男性に痴漢するケースなんて少ないと思ったけど、昨日のニュースの通り、この世界だと男性が被害者なんだ。…いい世界だなぁ。)
ー ガタンッ!
「キャッ!」
考えて事をしていると、電車が少し強めに揺れて後ろにいた高校生がぶつかってきた。
ムニュッ!
…っ!こ、この背中に当たる感触は!?
「ご、ごめんなさい!」
後ろの女の子は離れようとするが、ここ満員電車の中である。
動こうにも動けず、もがいたせいで背中に当たっているものが上下に揺れ、より感触が鮮明になる。
(後ろの子、大丈夫だよ!グッジョブ!全然嫌じゃないよ!)
女の子の顔は見えないが、背中の全面に柔らかく包み込まれるような感触を感じたため、かなりの巨乳だということが分かった。
さらに女の子の香りがふわっとして心が晴れやかになった。
ー ガタンッ!
またまた電車は揺れ、今度は後ろの女の子が離れて、前にいた女の子がぶつかってきた。
前にいた子は妹くらいのサイズなのに高校生の制服を着た、一部の人が大喜びしそうな女の子だった。←俺も喜ぶ
軽く茶色に染めた髪をスカートの裾まで伸ばし、茶色っぽいつり目をした可愛い女の子だった。
少し性格がキツそうな印象を受けた。
その女の子は、俺にぶつかると思ってとっさに手を出した。
しかし、それがいけなかった。
ここで思い出して欲しい。
妹と同じくらいの身長ということは、頭は俺の溝内辺り。
肩は俺の股間の辺りになるわけだ。
何を言いたいかと言うと…
「ぐはぁっ!!」
女の子の頭は溝内に、伸ばした手は俺の股間を下から押し上げるようにヒットした。
「わ、悪い!わ、わざとじゃないんだ!ご、ごめん!」
(むしろご褒美…ではない。恥ずかしいから放っておいてほしい。)
「大丈夫だよ。」(ニコッ!)
周りに女の子がたくさんいる状況でかっこ悪いところは見せたくないので、女の子に気にしないようにしてもらい、目をつむり無の境地に入る。
(まだ俺の息子は使ってないんだから、未使用のまま壊れないでくれよ!)
この世界に来て二回も股間に大ダメージを受けた俺は、切実にそんな事を思っていた。
(強く当たったけど、大丈夫かな!?何かグニュッてしたし。あ、あたい、ちゃんと謝れなかった。どうしよ、情けないぜ。)
(…さっき前にいた男の子に、後ろからぶつかって、迷惑をかけてしまいました。あの人、すごく良い匂いでした…って何言ってるのでしょう私は!?…そういえば、あの後ろ姿、どこかで見た事あるような?)
修史の願い事の一つ、「モテたい」の効果か、新たなフラグが生まれていた。
修史自身、きっと今日出会った二人の女の子と、また出会う機会は来るような予感がしていた。
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