骸と鉢を忘れて居たのはほんの一時だったが、不思議にせむしの気分まで遷っていた。あれはまだ在ったのだった。どうでも触らければならぬなら陽が落ちる前がいい。遅くとも明日には造った荷とともに動きたい。


外の陽は傾きかけている。せむしは立ちあがり鉢の室に入った。着物を山をじっと見た。


この下に在るもののために、初めての掛りごとに掛りきりになった。面白い。生きている者に、遷るから一緒に来いあれこれを持て早く早くなどと指図されたのだったら不満の他になにも無かったろうが、黙ってそこにただ在るだけの骸ひとつが自分を忙しくしかも面白く動かしている。


骸を見ないために被せた着物の山が、塚のように見える。塚の下に在るものはもうほとんど骸ではない。動かず何も言わないが、塚の下から生者以上のゆたかさでこちらの意に働きかけてくる。だがこちらの働きに意を返しては来ない。せむしにはそれが好ましい。


ふと、どんなふうだったろうか、と思った。せむしは塚の上のほうを開いてみた。最後の一枚を取りのけ、あの顔を見た。眼は開いていた。これは数十日は脳裏に厭に浮かぶな、と思いつつ、やめておくのだったとは思わなかった。その眼を自分の手でふさいでやると、首から下の厚着の山が異様に見えた。着物をすべて横に除けた。取り除けた後、さきほどまで燃すつもりだったことを思い出した。

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