蟲打つ者
せむしは己のなかに蟲を見ては責めようとする女の手を一度手荒く掃い退けた。一度掃うと、次からは声を荒げて掃わずにはいられなくなった。
掃い、掃い、掃っても掃ってもどこまでも女が諦めないことを、見るも厭わしい怖ろしいものがごく身近に居るとき、背け続けていたはずのその眼は瞬いて反転し怖ろしいものを凝り視て憎むことを、憎んだものに取りついて離れないことを、知ったとき、せむしは女の背を、殺す意をもって一打した。
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