おのぞみのおことば
あー…… 疲れたー……
午前十二時半、私が布団を抱きしめて横になって既に1時間以上経った。いかんいかん、宿題せねばと思うものの、布団の匂いを嗅ぐと一瞬で頭ん中から抹消されて、まあいいかってなってしまう。布団の魔力怖い。今日は嫌なこともあったし、神様だって少し休んだくらいで怒らんだろう。先生は怒るかもだけど。
すると天罰か下ったのか、ふと頭の中で担任の先生の言葉がフラッシュバックする。
「きみきみ、最近きみの悪い噂をよく耳にするが、何かあったのかなぁ? 」
「もしかしていじめられているのかいぃ? 」
「そういう時は耐エルんだよ、向こうの思考が幼いことは君もわかるだろうぅ? そんな大人な考えを持つ者の役目はなぁ、耐エル事なんだからねぇ! 」
ヴァー!! ンだよあいつ!! 何様なのよあいつ!? そもそもあの話し方!! 何でいちいち語尾伸ばすのよ!? イントネーション腹立つし! でなんでいじめとかに関してだけ勘が鋭いのよ! 知られない方がこちらとしても気が楽なの解んないの!? クソ、先生の人気投票ワースト2位が! うちの中学からいなくなってしまえ!
ハァ…… ハァ……
ふう……
一通り罵詈雑言を吐き捨てた私は少し落ち着きを取り戻した。おっとはしたないはしたない。それにしても、耐えろ、か。そんなことしても何も変わらないんだよなぁ、と私はボヤいた。だってそうだろう、何もしなければ何も変わらない。無視したところでそりゃストレスは溜まっていつか爆発するし、おさまるどころかもっと過激になるリスクもある。結局、あんなセリフは私のような経験が無い人が言うことだ。何もわかっちゃいない。そんな物事を停滞させて曖昧にさせるやり方で満足できるほどまだ私も大人じゃないんだ。過度な期待なんて背負えない。もっとほかの…… 気が利くようなセリフは言えなかったの!?
ここまできて、私はふと思った。じゃあ、いったい私の欲しかった言葉とは、なんだろう。気が利くセリフとは、どんなものなのだろう。一、二分悩んで、私は気づいた。
あれ?これあんまり思い浮かばない…… ?
おかしいな、と思ってもう一度思案するも、最適解となるような言葉はどうも見つからない。だって大丈夫だよ、とか言われても、え? どこがよ…… ってなるし、解決案なんて論外っていうほど頭に浮かばない。いざ考えてみるとこんなものなのか、と軽く失望。
数分間の間を置き、気の利いた言葉なんて本当はない、ということに気づいた。滑稽だな、と私は笑う。望んでいたくせに、いざどんなのが欲しいと問われると何も浮かばないなんて幼稚園児かよ。私は謙虚な方ではないか、と思っていたんだけどな。結構ワガママじゃないか。嗚呼、とても馬鹿らしくて、なんて、
愛おしいのだろう。
とんだ茶番劇だ。けれど、まだそれを見ていたい自分がいて。そんな淡い願いのような何かを思い、私は電気を消した。今日はどんな私が見えるのだろう。
数分後、私は不機嫌な顔で布団から出て、宿題を手がけ始めた。すっかり忘れていた。時刻は午前一時半を指していた。
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