4カ所目 左乳首

来た。

左乳首。

言わずもがな、男女問わず感じやすいところの一つ。


「よしっ」


私は思わず心の中でガッツポーズを作る。左乳首が性感帯なってくれるなんて、今日は何て良い日だ!

・・・こんな言い方をしていると変態みたいだが。


私は会社勤務。そして昨今はすぐにセクハラが問題になる時代だ。

つまり、胸を触るなどもってのほか!!故意ではなかったとしても多少の問題にはなるだろう。要は、乳首が性感帯である以上、私が他者に感じさせられる心配などない。


「ふふふ・・・」


今日は平和だ。胸を触るなど、小学一年生ですら憚る代物だ。例えば、まだ何も知らない幼気いたいけな乳飲み子だったら本能で求めるかもしれないが、ここは大人が働く世界。そんな心配は・・・。


「ちゃーん!」

「・・・」


私はOL。オフィスデスクで働く普通の女性で、ここは普通の会社。

つまり、私のデスクの上にまだ何も知らない純粋な赤子がいるなんてことは・・・。


「赤子ぉ!?」


何故に!?何ゆえ、私のデスクに赤子が!?


「あ、ごめんなさい、郁乃さん!!」


慌てている私に状況を説明したのは既婚者の末永だった。


「こ、この子は?」

「健!私の子供なんだけど、今日はどうしても家に置いておけなくて・・・。だから連れてきたの」


いやいやいや、非常識過ぎるだろう・・・。いくらのっぴきならない事情だとしても、普通会社に連れてくるか?というより、何故、それをウチの会社は許しているのだ・・・。


「末永くん、ちょっといいか?」

「あ、すぐ行きます!ごめん、郁乃さん。健のことちょっと見ててくれない?」

「なに!?」

「あれ、もしかして子供嫌いだっけ?」

「いや、そんなことはないが・・・」

「じゃあ、お願い!すぐ戻るから!」


嫌いではない、むしろ好きだが・・・。だとしても、今日は無理だ!この赤子は唯一私の左乳首アンタッチャブルに侵入できる可能性がある存在なのだぞ!?

やはりここは誰か別の人に・・・。


「たぁゆぅっ!」

「・・・かわいい・・・」


----------


結局、私が見ることになってしまった。基本は大人しい子で迷惑をかけないそうだから、時々様子を見てやればいいとのことだが・・・。

確かに、今は私の膝の上で猫のように丸くなってしまった。このままでいてくれることを願うしかないか。


「ん~・・・」

「え?」


早い。願った直後なのだが、もう動くのか?彼は私の膝の上でもぞもぞ動き出す。


「ちょ、そこは・・・」


何を思ったか、赤子は急に私のブラウスの下に潜り込み始めた。

赤子が私の肌に直に触れる。・・・く、くすぐったい・・・。

い、いや、くすぐったさなど些末な問題だ!今赤子が登っている山の頂にあるのは・・・。


にぎっ。


「あんっ」


その赤子の小さな手は、的確に私の左の乳頭をソフトタッチで包み込む。

と、というより・・・何故、直接・・・。

ブラジャーを潜り抜けることは容易だとでもいうのか・・・?


「はぁ、はぁ・・・」


ち、力で引き剥がせばこの状況を脱せられるが・・・。

人様の赤子にけがでもさせたら大変だしな・・・。どうすれば・・・。


「・・・あれ・・・?」


無くなった、感触が。赤子の手が私の乳頭に触れていた感触はもうしない。

何だ、飽きてくれたのか?


「それならぁ・・・ぁああんっ!」


お、おい、そ、それは・・・。それは、ダメ・・・。

その小さな口は、私の敏感な部分を優しく包み込む。


「あっ、ちょっ、ほんとにっ・・・」


あ、赤子だからといって何でも許され・・・るよな、赤子だもんな・・・。

だからといって、ダイレクトに吸われたら・・・。


「・・・んっ、んんっ・・・」


ま、まだ出ない・・・。私は、まだ出ないから・・・。

周りに気付かれないように必死に声を押し殺す。そして、私は思うのだった。


・・・いつか、私に子供ができたとき、私って、きちんと授乳できるのだろうか・・・。


《つづく》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る