ひとひら

ふみ

記憶


忘れていた物事が

ノートのあいまに挟まっている

ささいなことではあるけれど

散らばったすてきとすてきの間を

こぼれたはずの水のようなそれらは

ささやいてくれるのだ


ざざん、ざあざあ

打ち寄せては引く

記憶の波に

流れ

遠くへ行ってしまうものもある

不完全だけれども

朧げな形を保つそれらを

さぐり

さくりとはめ、

のこし

また忘れて

ざわり、怖がり

さわれないけれど

包み込みたいように思うのだ


密はやがて空く

そしてまたさわさわと積もり

ふと見ると

あたたかな

なつかしさを愛おしむ気持ちが

あいまあいまに

さんさんと

しみこんで

すきなせかいへ

また向かわなくちゃ


そうして

おやすみとおはようをまた

繰り返していく





2010.10.2 (2018.8.11改稿)

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