第六十三話

/*** カズト・ツクモ Side ***/


 どうやら、夜の見張りは、カイとウミとライも参加することで、決着したようだ。


 それから、クリスが、オリヴィエとリーリアから、樹木のスキルを教わりながら、小屋を作成した。初めてにしては、なかなかうまく作れたと思う。樹木のスキルは、エントとドリュアスの種族スキルだが、野営地を作ったりする時には重宝する。

 クリスは、魔眼という特殊なスキルを持っているので、スキルを使う時に、なるべく並列で使うようにさせてみた。魔力の流れが見えるのなら、スキルを使う時に役立つだろうと思ったが、想像以上に疲れるようだ。今、自分が作った小屋でぐっすり寝てしまっている。


「ご主人様。お休み下さい。後は、私たちが見張りを行います」

「そうか・・・リーリア。絶対に無理するなよ。オリヴィエも、エリンも、なにかあればすぐにおこせよ。起こされる事よりも、お前たちが傷ついたほうが俺は怒るからな」

「はい」「マスター。解りました」「うん!パパ。わかった!」


 俺も、オリヴィエが作った小屋に入って休む事にした。

 中は、それほど広くないが、今の俺が休むには十分なスペースがある。すでに、ウミが丸くなって寝ている。カイが見張りに出るようだ。ライも俺の後からついてくる。

『あるじ。布団と枕だす?』

「そうだな。頼めるか?」

『わかった!』


 草木で作られたベッドだから、弾力は十分だが、やはり布団が有ったほうが寝やすいのは間違いない。

 ウミを抱きかかえて、ライに布団を敷いてもらう。布団に横になると、さっきまで感じていなかった睡魔が襲ってきた。


 1人になりたいとか思っていたけど、カイやウミやライと一緒の行動は楽しかった。勝手に、馬車から飛び出して、魔物を狩って、自分では持って帰られなくて、ライを呼びに来るウミとか、カイやライとスキルの実験をしたり・・・。洞窟を手に入れたばかりの頃を思い出す。最初の頃と比べて、かなり周りの環境は変わった。

 洞窟の入口は、崖の正面からは岩で塞いで滝で目隠ししているから、空気穴と魔蟲が外に出るくらいにしか使っていない。ログハウスへの抜ける竪穴は、俺たちが使うだけだ。それも改造に次ぐ改造で遂にエレベータのような物まで作成できた。まだ、魔蟲力?での運用だが、スキルの組み合わせでうまくできないか考えている。


 洞窟に繋がるもう一つの通路は、居住区に繋がっている。

 アルベルタとフィリーネが、居住区の担当として動いてもらっているが、二人からは問題はないと報告を受けている。時々、ナーシャがダンジョンに潜る時に、ヨーン=エーリックと言い争いをするそうだが、最初は皆が相手していたが、あまりにも馬鹿らしい事情だったのが判明して、最近では誰も相手にしていない。

 イサーク達も、当初は商業区を拠点にするつもりだったらしいが、クリスの護衛というもっともらしい理由で、居住区に来て、いつの間にか宿区を拠点にして、ダンジョンに潜っているそうだ。


 イサーク達が言うには、俺たちが潜っているダンジョンはやはり特殊なようだ。

 通常のダンジョン(サラトガのダンジョン)では、階層踏破時にスキルカードをもらえたりする事が無いと話していた。あと、転移場所も、ダンジョンの入口から離れているのも不思議だと言っていた。サラトガのダンジョンだと、転移はできるらしいが、できる階層も決まっていて、俺たちのダンジョンの様に、階層ごとに転移場所がある事が無いのだと説明された。


 帰ったら・・・宿区を取り仕切る者たちに、名前をあげないとな・・・。

 宿区には、10店舗ほどの宿があるが、未だに名前を着けていないからな・・・管理するエントやドリュアスに名前を与えて、それをそのまま宿の名前にすればいいよな。


/*** カイ Side ***/


『ライ。主様は寝られたか?』

『うーん。ちょっと待って?』


 野営地で、警戒しているが、主様の周りを取り囲むように、アントやビーナたちが警戒している。

 そのために、この場所の警戒は、主に、クリスの暴走を止めると事に有るのだが、そのクリスから、先程謝罪が入ってきた。


 僕たちと主様の旅を邪魔した事への謝罪だった。主様が、お認めになった事を、僕たちが文句を言う事はない。その事を伝えたら、安心して眠られたようだ。

 スーンや、獣人族の族長会議が言っている事もわかる。確かに、主様の跡継は、あの場所を維持するためには必要なことだろう。でも、僕とウミとライの考えは違う。主様は主様だけなのだ。跡継ができようが、僕たちがお使えするのは、主様だけだ。


『カイ兄。あるじは寝ているよ』

『ライ。主様を中心に結界を展開できるか?』

『うん!できるよ。スキル使うね』

『頼む』


 これで大丈夫だ。

 ウミが一緒に寝ているだろうから、結界が破られるような事が有っても対処できるだろう。


『ライ。リーリアとオリヴィエとエリンの所に行きますけど、どうします?』

『一緒に行くよ!』


 ライが小屋から出てきた。

 一緒に、隣にある。もう一つの小屋まで行ってから、リーリアに話しかける。


 すぐに、リーリアは小屋から出てきた。


「カイ兄さま。なにかありましたか?」

『クリスは寝ているのか?』

「はい。ぐっすりです」

『そうか、オリヴィエとエリンはどうしている?』

「・・・」

『どうしている?』

「はい。近くで、ボアの気配を感じたと言って、明日の朝食に、ご主人様にと申しまして・・・」

『そうですか・・・それで、リーリアが残ったのですね』

「はい」

『ライ。クリスにも結界を展開しておいて下さい。傷ついたら、主様が気になさりますからね』

『わかった!』

『リーリア』

「はい!」

『何を緊張しているのですか?』

「・・・カイ兄さまが、なにか怒っていらっしゃる・・・のでは無いかと・・・」

『はぁ・・・怒っていませんよ。それよりも、明日以降の事を話しておきましょう』

「はい」


 明日以降。

 食事や身の回りの世話は、リーリアとオリヴィエが行う。クリスが手伝いたいと言った場合には、リーリアの判断に任せる事になった。明日は、サラトガの街に入ってから、ダンジョンに向かう事になるのだが、宿区に来ている冒険者たちの話では、難易度はそれほど高くないだろう。

 踏破もできるだろう。ダンジョンの最奥の情報は無いらしいが、それでも僕たちなら行けるだろうと思っている。


 オリヴィエとエリンが戻ってきた。

 フォレストボアを数体倒したようだ。2体を残して、ライが保管する事にした。一体は、解体を行う。もう1体は明日サラトガに入った時に、街で交換できないか交渉する。スキルカードには、余裕があるが、無理に使う必要はない。今まで聞いている情報だと、サラトガも食料に困り始めているらしいので、フォレストボア程度でも、喜ばれるだろう。残りの、フォレストボアは、宿区に必要な分量を渡して、残りは居住区にわたす事になった。宿区ではクリスが滞在しているので、その料金代わりにすればいいだろう。


/*** リーリア・ファン・デル・ヘイデン Side ***/


 カイ兄さまから呼び出しがあった。今から行くと言われた。なにか、すごく怒っているように感じる。


 やっぱり怒っている。

 クリスの事で怒っているのか?それとも、私やオリヴィエやエリンの事でしょうか?


 ライ兄さまも一緒に来られている。

 ご主人様とお会いするよりも、カイ兄さまと対峙するほうが緊張する。正直、私なんて、カイ兄さまが本気を出されたら瞬殺されてしまいます。確かに、種族的には、イリーガルを持たさせていただいていますが、スキル構成があまりにも違いすぎます。それだけではなく、小さなフォレストキャットの体躯のままいらっしゃいますが、実際には、5mを越える大きさが本来の大きさです。ご主人様の近くに居るために、身体の大きさを調整していらっしゃるのです。


 私も、一度だけカイ兄さまとウミ姉さまの狩りに同行した事があります。

 ライ兄さまが、SA/PAの整備のために出ていった時に、荷物持ち兼私の踏破履歴の更新のためについていく事になりました。


 あの時の事は二度と忘れません。

 最初は、私がカイ兄さまやウミ姉さまを守らないとと思っていたのですが、必要なかったです。60階層までそれこそ一気に駆け抜けたのです。雑魚は必要ないと言わんばかりに、前に立ちふさがる魔物だけを倒していきました。それも、ほぼ一撃です。私は、後ろから付いていって、落ちたスキルカードと魔核を回収していっただけです。

 それでも、カイ兄さまとウミ姉さまは、レベル5以下の魔核は、私が吸収して良いと言っていました。最初、吸収を戸惑っていたら、邪魔だからさっさと吸収しろと言われてしまいました。


 その後、61-65階層を繰り返し周りました。

 レベル7魔核やレベル7のスキルカードが大量に手に入りました。カイ兄さまとウミ姉さまの狙いは、レベル7詠唱破棄と帰還と即死のスキルカードを眷属分得る事でした。あと、レベル6変体のスキルカードは、ご主人様がいろいろ実験をされるので、かなりの枚数が必要になるのだと言っていました。


 1日程度、ダンジョンの中に居たと思いますが、やっとレベル7の3種類のスキルカードが、眷属分手に入りました。


 カイ兄さまもウミ姉さまも、簡単に倒していますが、61階層以降に出てくる魔物は、私たちレベルの”イリーガル”が数体で倒すのがやっとではないでしょうか。多分、私とオリヴィエとエリンでは、死なないとは思いますが、何回かの戦闘で限界が来てしまう可能性があります。そうしたら、逃げるしかありません。


 そうカイ兄さまに告げると、笑いながら、それでは、順番に鍛えると言われてしまいました。


/*** カズト・ツクモ Side ***/


 カイとウミの重さで目が覚めた。


 さて、今日はサラトガに入って、そのままダンジョンに向かう事にしている。


『主様』

「あっ悪い起こしたか?」

『いえ、大丈夫です。お願いがあります』

「ん?なに?」

『まずは、ライが一緒にサラトガに行けるように、普通の袋があると嬉しいです』

「あぁそうだな。収納袋になっていない物が有っただろう。あれを、肩掛けカバン風に変更するか?」

『はい。お願いします。それから、僕たちのスキルの調整と、偽装と隠蔽をお願いしたいのですがよろしいですか?』

「そうだな。確かに、そうしたほうがいいだろうな。眷属化よりも、隷属のほうが一般的なのだろう?」

『そう聞いています。偽装した上で、隠蔽すればよろしいかと思います』

「あぁそうか、そうすれば、疑い深い奴や、鑑定を持っている奴は解るけど、それ以上調べようとはしないだろうな」

『はい』

「解った、まずは誰からやる?」

『僕、ウミ、ライ。その後は、順番に呼んできます』

「わかった。スキルカード・・・は、これを使えばいいのか?魔核吸収でいいのか?」

『はい』


 イマイチ、固有スキルになるのか、スキル枠が使われるのか解っていない。鑑定したり、ステータスを見たりする時には、全部”固有スキル”と表示されているので、問題は無いだろうけど、あまり頻繁にできる実験でも無いからな。

 スキルのほとんどを、偽装を使って隠蔽しておく、隷属は人族で実験した時に、どうなるのが一般的なのか調べたから、どういう記述にするのがいいのか解っている。称号に関しても、全部隠しておく。


// 名前:カイ

// 種族:フォレスト・キャット

// 隷属:カズト・ツクモ

// 固有スキル:変体

// 固有スキル:即死

// 固有スキル:超向上スキル

// 固有スキル:超低下スキル

// 固有スキル:水系スキル

// 固有スキル:氷系スキル

// 固有スキル:物理攻撃半減

// 固有スキル:スキル攻撃半減

// 固有スキル:状態異常半減

// 固有スキル:詠唱破棄

// 固有スキル:帰還

// スキル枠:念話

// 体力:A

// 魔力:C


// 名前:ウミ

// 種族:フォレスト・キャット

// 隷属:カズト・ツクモ

// 固有スキル:変体

// 固有スキル:水系スキル

// 固有スキル:氷系スキル

// 固有スキル:炎系スキル

// 固有スキル:岩系スキル

// 固有スキル:風系スキル

// 固有スキル:雷系スキル

// 固有スキル:異常系スキル

// 固有スキル:半減系スキル

// 固有スキル:即死

// 固有スキル:詠唱破棄

// 固有スキル:帰還

// スキル枠:念話

// スキル枠:治療

// 体力:C

// 魔力:B


// 名前:ライ

// 種族:フォレスト・スライム

// 隷属:カズト・ツクモ

// 固有スキル:巨大化

// 固有スキル:収納

// 固有スキル:融解

// 固有スキル:分裂

// 固有スキル:物理攻撃半減

// 固有スキル:スキル攻撃半減

// 固有スキル:状態異常半減

// 固有スキル:超向上スキル

// 固有スキル:即死

// 固有スキル:詠唱破棄

// 固有スキル:帰還

// スキル枠:念話

// スキル枠:岩弾(酸弾)

// スキル枠:眷属化

// スキル枠:治療

// スキル枠:呼子

// 体力:B

// 魔力:C


// 名前:リーリア・ファン・デル・ヘイデン

// 種族:ハーフ・ホビット

// 隷属:カズト・ツクモ

// 固有スキル:人化

// 固有スキル:樹木

// 固有スキル:清掃

// 固有スキル:遠見

// 固有スキル:操作

// 固有スキル:即死

// 固有スキル:詠唱破棄

// 固有スキル:帰還

// スキル枠:隷属化

// スキル枠:隠蔽

// スキル枠:念話

// スキル枠:影移動

// スキル枠:隠密

// スキル枠:結界

// スキル枠:収納

// スキル枠:治療

// 体力:D

// 魔力:B-


// 名前:オリヴィエ・ユリハルシラ

// 種族:ハーフ・エルフ

// 隷属:カズト・ツクモ

// 固有スキル:人化

// 固有スキル:樹木

// 固有スキル:体力超強化

// 固有スキル:速度超向上

// 固有スキル:攻撃力超向上

// 固有スキル:探索

// 固有スキル:索敵

// 固有スキル:速駆

// 固有スキル:即死

// 固有スキル:詠唱破棄

// 固有スキル:帰還

// スキル枠:念話

// スキル枠:収納

// スキル枠:治療

// 体力:B

// 魔力:C


// 名前:エリン・ペス・マリオン

// 種族:ハーフ・ドラゴン

// 隷属:カズト・ツクモ

// 固有スキル:人化

// 固有スキル:ブレス

// 固有スキル:飛行

// 固有スキル:上位竜

// 固有スキル:水・氷系スキル

// 固有スキル:火・炎系スキル

// 固有スキル:風・雷系スキル

// 固有スキル:念話

// 固有スキル:帰還

// スキル枠:即死

// スキル枠:超向上スキル

// スキル枠:超低下スキル

// スキル枠:異常スキル

// スキル枠:詠唱破棄

// 体力:C+

// 魔力:C


 うーん。

 これでいいのかわからないけど、リーリアとオリヴィエとエリンは、ハーフを望んだけど、これでいいのか?

 特に、エリンに関しては、ハーフ・ドラゴンってなんだよってツッコミを入れたくなってしまった。

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