第21話

雨が降らなくなったと思ったら、空気の感じが変わった。

風が冷たく突き刺さるようになり、先に衣替えしたオレを追いかけ追いついた冬が始まる。

吐く息が白いな。

「センター試験の前に、神頼みするかな」

ナギさんに誘われて氏神様にお参りした。

帰り道は、雪が降る前の凍るような空気感。これから凍てつく季節になる。

でも、ナギさんはこの季節に生まれたんだ。感慨深い。

「お願いしたか、きちんと」

「あ、はい」

先を歩くナギさんが風に飛ばされないか心配だ。黒い髪が風に煽られていいようにされている。その姿が生き様に重なりそう。

それに、コートのポケットに手を突っ込んで歩いたら、転んだ時に怪我するって、施設でも言われたのに。危なっかしいなあ。


でも、ナギさんて強い。

人に愛情注ぐには自分が強くないと共倒れする。この人にはその覚悟がある。

いつか、追いつけるかな。

あなたが自分の事を考えて幸せになれるように、及ばずながら力になりたい。


頬が冷たい、手の甲で触れたら指の方が冷えていた。


「広軌をちゃんと見てるから大丈夫だ」

「神様が、ですか」

革靴の音がしないと思って気付いて顔を上げたら、ナギさんが振り返って足を止めていた。

白い息の先から黒いコートの袖が見えて、暖かな指先がオレの手を掴むと、自分のコートのポケットに一緒に突っ込んだ。

「見てるのは、俺だ」



おわり

ありがとうございました

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る