第1022話 さまよえる廃屋(2)大物スポット
調べるのはいいが、今どこにあるのかもわからない。
「でも、この団体って、何年か前に問題を起こした団体だったよな」
「そうだよねえ。覚えてるよぉ」
元々は、アトピーの子供を抱える親や本人が集まって、無農薬食品や無添加化粧品について調べたり、取り寄せて販売していた団体だったが、そのうちに、合宿所のような所で同居して、無農薬野菜の栽培などを行ったりし始め、それを契機に、宗教的になって行った。
そのうち、逃げ出した会員が警察に駆け込んで、「毒素を抜くための治療」という荒行のようなものでたくさんの者が死に、逃げ出そうとした者も捕まってリンチされて死んでいて、それらの死体は建物内の農場に埋められて養分にされていると告白。
警察が踏み込んで調べたところその通りで、十数人分の遺体が見つかった。
そしてその敷地は、やはりと言うべきか、心霊スポット扱いになった。「埋められた会員達が今も歩き回り、彼らに見つかったら、畑の土の下に引きずり込まれる」という話で、「グリーンハウス」という呼び名がついた。
それはガセではあるが、毎日のように肝試しに訪れる者が現れたという。
「まずは、元々あった場所に行くか」
そう言って僕と直は出かけたのだが、見事、そこは更地になって、コインパーキングになっていた。
「無いねえ」
「記憶が実体を持ってうろついてるのか?」
僕と直は、困ったことになったとウンザリした。
だが、同様の事件が別々の場所で3回起こり、僕達は地図を睨んで考え込んだ。
「次はどこだ?このグリーンハウスの女2人組は何を探してるんだ?」
「違う、だもんねえ」
被害者達の額の傷は、10日もすれば消えるくらいの浅いものだが、バツ印を入れられた方にすればそういう問題ではない。10日間は、額にバツ印を入れて生活しなくてはいけないのだ。たまったものじゃない。
すると、美保さんが言い出した。
「あ。グリーンハウスですね。有名な」
それに、美保さんと同じく心霊大好きな神戸さんも目を輝かせた。
「大物ですもんね」
すると氷室さんまで来た。
「行ってみたかったんですよねえ」
そして3人で、期待するような目を向けて来る。
「お手伝いしましょうか」
「……そんなにここ、行きたいのか?」
3人は力一杯頷いた。
「まあ、どこに出るかわからないんだけどな」
「余計にレア感が増した!」
3人は静かに興奮している。そんなに行きたいのか。
「じゃあ、見つけたら同行させてやろうか?」
言うと、3人は目の色を変えて地図にかじりつき、僕も直も、呆然とした。
「最近で一番の真剣さだな」
「驚く熱心さだよう」
と、ごそごそと相談していた3人は、意見を固めたらしい。くるりと僕達を振り返って見た。
「次の出現位置候補を絞りました」
「嘘ーっ!?」
「早速、探知機を持って、調査に向かいましょう!」
神戸さんはやる気に満ち溢れた顔でそう言った。
かくして、僕達はその候補地へと出かけて行く事になったのだった。
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