第1017話 連鎖(1)幼児の訴え
「怖い顔をしたお婆さんの幽霊が来るから」
公園で遊ぶわけでもなく1人で身を固くしていたので、どうしたのかと巡回中の警察官に尋ねられた子供は、青い顔でそう巡査に訴えた。
その内容云々もさることながら、巡査達は、その子の様子に注目した。
服はサイズの合ったもので、清潔だ。髪も整えられている。痩せているというわけでもない。しかし、半袖の袖口から出た腕や半ズボンから出た足にいくつも青あざがあるし、視線を合わせようとしない。
巡査2人は顔を見合わせた。
「取り敢えず、家まで行ってみましょうか」
「そうだな。虐待か、陰陽部案件かも知れんしな」
小声でそう相談すると、子供に笑顔で話しかけた。
「お巡りさんが見てみようか。それで、必要なら、お化けの専門家を連れて来るよ」
子供はパッと顔を上げた。
「本当?」
「うん、本当。だから、お家に連れて行ってくれるかな?」
子供は安心したように、肩の力を抜いた。
巡査は神妙な顔付きで、続けた。
「幽霊はともかく、その子はどうも虐待を受けていたようでした」
「子供は三船明人君、5歳。母親の三船幸恵24歳と2人でアパートで生活していました。幸恵は昼間はスーパーで働き、その間明人君は留守番をしているそうです。
明人君の父親は高校の同級生で、高校卒業後に籍を入れ、2年で離婚。今は会社の同僚と再婚しているそうです。
どうもはっきりとは明言しませんでしたが、母親はどうも手を挙げているんじゃないかと、近所の住民も証言しています。
それで女の幽霊ですが、明人君が言うには、お母さんが怒った時に出る、と」
明人君の家まで行った巡査達がそう言った。
幽霊が見えなくとも、母親からの虐待が大問題だと顔に書いてある。
「虐待はそっちに任せるとして、幽霊だな」
僕は言いながらも、その子が今どうしているか気が気じゃなかった。
「お母さんが怒っている時に出る、ねえ。なんだろうねえ」
直が唸る。
「すぐに行こう」
「そうだねえ、うん」
僕と直は、すぐに立ち上がった。
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