第三話
もう四、五年会ってない。
変わったのだろうか?変わってないのだろうか?
恋は、しているのだろうか?
楽しい日々を過ごしているんだろうか……
亜紀と真樹、お互いに考えていた。
亜紀は短大、真樹は四年制大学へ進み、もう五年。
一足先に社会に出た亜紀。
今年から社会に出た真樹。
お互いにこの五年間は、それなりに過ごして来た。普通に楽しみ普通に恋もして。
ただ…… お互いに物足りなさは、あった。
昔、
『卒業しても大人になっても、ずっと
一緒だよ! 』
その言葉が…… お互いに頭の片隅にあったから。
とっくに大人になった二人は、あの頃まだ幼かった時と違い、綺麗になり何よりしっかりとした考えを持てる女性になっていた。
今なら……
お互いに、きちんと気持ちを伝えられ昔の様に仲良く接する事ができるのでは?
そう思う日もあった。
なかなか社会に出て大変な毎日を過ごしていた二人だったので、行動に移す事が出来なかったが……
その頃、お互いに恋をした。
亜紀は、短大時代に知り合った男性と偶然出会った。その当時から多少の好意はあったが恋愛迄は、いかなかった。
偶然の出会いということもあり、意識するように。
積極的で行動が先の性格は、変わらない亜紀。早めのアプローチをするが、男性は好きな人が他にいるらしく、なかなか上手くいかなかった。それでも以前の亜紀らしく半ば強引に、気持ちを押し通し男性と付き合う事が出来た。
真樹は、社会人一年目で恋をする余裕など無いと思っていたが、同じ会社の人に好意を持つ。その相手の男性は他の女性たちにも人気があったが、男性も真樹に好意を持っていた為すんなり付き合う事が出来た。
ただ会社に入って一年目の真樹なので、周りの女性達からは嫉妬された。
真樹自身、自分を変えようとこの五年 過ごして来たので、周りの目より自分の素直な気持ちを優先した。
亜紀も真樹もお互い充実した日々を、過ごす事が出来た。短い時間だったが……
亜紀は、やはり苦労した。恋愛に。
元々、亜紀の相手の男性は他の女性を想っていたし。学生の時とは違う恋愛。
自分の気持ちだけでは、上手くいかない。徐々に男性とも距離が出来、結局は別れた。
別れたというより…… 男性が元々想いを持っていた女性と……
亜紀の一方的とも言える恋ゆえ、結果的に亜紀は捨てられた様なものだった。
真樹も……
亜紀とは違い、お互いに好き同士の仲。
ただ、真樹の弱さが段々と出て来た。
周りを気にせず自分の気持ちに正直に。
と思い男性と付き合ったが、徐々に周りに気を使う様に……
元々、他の女性たちにも人気のあった男性。嫉妬や妬みが続いた事が、辛かった。まだ社会に出て一年目の真樹には、そんな妬みに対して堂々とできる程、自分に自信が無かった。
結局…… 上手くいかなかった。
真樹は、昔の様に考え過ぎて恋に怖くなった。そんな自信を持てない真樹を見て、男性も離れていった。
男性は、その後すぐに派遣で来た若い女性と付き合う事に。真樹より二つ下の女性に。
何故か……
亜紀と真樹は、昔の恋愛そのまま同じ事をして、同じ過ちを繰り返していた。
それは、本人達も気づいていた。
一時の幸せな時間が終わり、急に淋しく孤独感が襲って来た二人。
そんな時、思うのは……
お互い連絡を取ろう思えば、何とか出来る筈なのに……
大人になりあの頃とは、また違うプライドもあったし何より、五年も会っていない事が二人の素直な気持ちに邪魔をした。
友達、親友、だから…… こんな時、一緒に居たかった。
お互い、足りない事を補える。
お互い、駄目な所を素直に言いあえる。
そして…… 慰め合い、一緒に前を向ける。
恋が上手くいかなかった事より……
ツラく…… 寂しく……
いつかは……
と、思い続けていた二人。
昔の中学生の頃の写真を見つめながら。
『真樹…… 大丈夫なの? 一人で、めそめそしてない? 元気かな〜〜? 逢いたいな』
『亜紀…… もう私の事なんて…… 何も考えずに突っ走って後悔とかしてないよね?
亜紀は…… つよいから大丈夫だよね?
…… 逢いたいな〜〜 』
そんな二人の想いが……
静かに佇む愛染橋に風が吹いた。
二人に呼びかける様に……
第三話 終
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