属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか?

aoiaoi

憧れの上司の嫁になる!!

 俺は、目標を立てた。

「憧れの上司の嫁になる!!!」と。


 え、寝ぼけてんのかって? いや、俺は至って真面目だ。



 篠田 航平。24歳。中堅家電メーカーであるこの会社の広報部へ入社して2年目だ。

 そして、俺の直属の上司、小宮山係長。この4月に営業部からウチの部門へやってきた、バリバリのエリートだ。

 頭良し、顔良し、カラダよし。

 うーん、ほんと最高。


 は? お前はそういうバリバリな男の妻になる気かって?

 いや、それは違う。小宮山係長は女だ。

 その辺の男など到底敵わない、完璧な女性。

 小宮山 麗奈れいな。ああ、名前までもが美しい。

 俺より三つ年上の、27歳。現在彼氏ナシ。この前の飲み会でやっと手に入れた、非常に貴重な個人情報だ。


 長く艶やかなストレートヘアをキリリと結んだ、しなやかなポニーテール。凛々しく整った眉。くっきりとしたアーモンド型の二重瞼に縁取られた、明るい茶色の大きな瞳。

 白く滑らかな頬、すっと通った鼻筋。

 強い眼差しと共に明確に動くヌーディピンクの唇が、たまらなくセクシーだ。

 品のあるタイトスカート姿も、股下の超絶長いパンツスタイルも。背筋の伸びて均整の取れたその美しさは、失礼とは知りつつもついついじっと見入ってしまう。


 そして何よりも俺が惹かれる彼女の魅力は、その人間性だ。

 バリバリなのに、冷たくない。一見クールで無愛想だが、俺みたいなフツーとしか表現しようのない部下にも優しく、配慮も厚い。共に働くメンバーへの細やかな愛情に満ちている。

 どうだ、並の男よりはるかに男前だろ!?

 ぶっちゃけた話、俺は、彼女が異動してきて3日目には完全にこの人に惚れていた。



 へっ、プライドってもんがないのかよ?どんな女だとしても男が嫁入りはねーだろ!

 と吐き捨てたそこの君。

 よく考えてみてほしい。

 自分より明らかにレベルの高い相手に近づきたいと思った時、男として勝つ自信がないとしたら……君はどうする?

 はっきり言う。俺は男として勝つ自信がない。

 歯が立たない壁に無理やり噛み付こうとしたって、果たしてうまくいくだろうか?


 だから俺は今、相手より下なら下である自分を素直に認め、その上で相手の視界に入る方法を必死に考えているのだ。



 実際のところ、これまで恋とか何かにはあまり興味がなかった。恋愛経験値は明らかに低く、しかも今回のケースは、男が女に平凡にアプローチするありきたりな恋愛マニュアルは全く役に立たない。

 とうとうここに来て、俺は追い詰められた。

 そこで、いま思いつくたったひとつの秘密兵器らしきものを握って、一か八かこの勝負に乗り出そうとしている。


 その秘密兵器とは……

 絶対に「男前」という属性では攻めない、ということ。

「彼女を落とす」が無理なら、「彼女の嫁」になってやる!

 つまり、そういう発想だ。


 生まれて初めてこんなにも深々とハートを射抜かれた女性だ。この際、なり振りなど構ってはいられない。

 当たり前な攻め方は玉砕するだけ。そんなのは絶対嫌だ。

 とにかく俺は「彼女の嫁」を狙うのだ!たとえどんな属性に変化してでもな!!……「男前」以外で。



 そんな破れかぶれ的かつ断固とした決意を胸に、俺は手強い敵を攻め落とす方法を練ることにしたのだった。




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