火花を刹那散らせ

ひよく

老剣士

剥き出しの岩肌。

草木もない荒原。

しかし、その空は青く高く、1人の剣士を見下ろしていた。


老剣士である。


顎鬚も頭髪も真っ白で、顔には深い皺が刻まれている。

その体躯はその年齢にしては逞しいものだが、若かりし日のそれには遠く及びはしない。


しかし、その眼光は鋭く、数々の修羅場をくぐり抜けてきた愛剣と共に、言いようのない覇気を漂わせていた。


そんな老剣士の覇気を真正面から受け止めて、ゆっくりと近付いて来た人物がいる。


同じく腰に帯剣した剣士である。

老剣士に劣らぬ鋭い眼光の持ち主。

全身から発する雰囲気も、その老剣士によく似ていた。


だが、ひとつだけ違う点があった。


彼の肉体は、今まさに人生で最も充実した時期を迎えているのである。


彼と老剣士は既知の仲であった。

今までに幾度も剣を交えてきている。


しかし、その度に彼は圧倒的な力の差で打ちのめされた。

老剣士の恩情で命まで取られる事はなかったが、誰よりも高い彼のプライドは、その度にズタズタに斬り刻まれたのである。

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