第19話明日香との再会


俺たちは一度宿屋に戻り、風呂に入り部屋に戻った。その時、アリシャに聞きたかった魔法の使い方について聞いてみることにした。

アリシャが言うには魔法とは火、水、木、光、闇の五種類の種族からなっていると言う、冒険者はどれか一種類に適性があり、それに磨きをかけ成長していく、アリシャが言うには俺は全属性を使えるらしい。

ちなみにアリシャは闇属性の使い手で、エリシアが火の使い手らしい。

魔法は各々が想像することで発動するらしいので想像力が魔法を使う鍵になるとアリシャは言っていた。

魔法は中学時代の時のオタク知識である程度は想像できる。それと、常日頃からエッチなことを想像しているので、より鮮明に想像出来る。


それから俺は魔法を試したくなり、部屋を出て、夜風がなびく外へ出た。宿屋から出て、数分歩いたところに広い広場があった。

広場の中心に立ち、想像する、まずは手に火を灯せるかやってみることにした。


案外簡単で、すぐに手のひらに赤い火が灯った。


これでは感覚が物足りないのでエクスプロージョンをやってみる。エクスプロージョンは俺が漫画やアニメで見た限りでは大技な部類に入る、なので周りに人がいないのを確認し、想像する。赤い炎が爆発し、周りを焼き尽くすイメージを想像し、それを具現化する。

手を掲げるポーズをしてみると、そこから赤い炎が放出され、周りの木々や、地面が破壊される。

赤い炎がとても美しく思えた。

俺は水を想像し、手から水を放射する。徐々に火が消え、木や地面が灰となった。


幸運なことに広場の近くには家はなかったので一安心するがやりすぎたことに凄く後悔する。

ここまで威力があるとは思えなかった。

どうしよー、、、。

そうだ!なかったことにしよう。

俺はなかったことにし、宿屋に戻るのだった。

だが、、、



「竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二竜二大好き♡」



俺の名前が呼ばれ振り返る、凄く聞き覚えのある声だった。



「双葉明日香!」



憎きあいつの姿は月明かりに照らされ、艶やかな黒髪がなびき、とても美しい。現代の姿とは変わりなく、服装は全身を黒いローブに包まれていて、殺気を醸し出している。



「やっと会えた...竜二なかなか一人にならないんだもん!この女ったらしが!二人も女の子を連れて!でも、竜二...大好き!このまま私と一緒にどこか遠くまで行かない?それと聞いて聞いて、私強くなったんだよ!いきなり敵が襲ってきたんだけど、無茶苦茶に切り裂いて殺してやったんだよ、せっかく竜二もこの世界に来ているのにいきなり死ぬかと思って少し焦ったなー...」



俺は平然と話してくるあいつに怒りをあらわにする。あいつも俺と同じ目に遭っていたのは少し同情してしまうが。



「お前!よくも俺の前に平然と姿を表せたな...殺す...絶対殺す!お前とどこか行くぐらいなら死んでも構わない!」



「待って待って、感動の再会じゃないの?私はとても会えて嬉しいのに竜二は違うんだ...残念だなー」



あいつは残念そうに下を向く。



「会えて嬉しい?そんなわけであるわけねぇーだろ!俺の彼女を殺して、俺を殺したんだぞ!それでよく俺の前に現れられたよな、狂っているしか言いようがねぇーだろ!」



「竜二、私ねこの世界好きだよ、何にも罪に囚われなくて、嫌いな奴は殺せば済むし、不満な点は少し食べ物が不味いってだけだなー後は竜二さえいれば私は満足だなー竜二大好き♡」



「俺はお前が憎くてしょうがない!」



「さっきからお前お前って止めてよ!私は明日香って言う名前があるの!だからこれから明日香って呼んでね!別に明日とか明日ニャンとかそこらへんの呼び名は任せるよ」



「だったら俺はお前を殺人鬼って呼ぶわ、殺人鬼は俺に会うまで何をしていたんだ?」



「少しは私に興味があるんだ...嬉しいな〜って殺人鬼って酷いな!今までねー、私は嫌いな奴を殺しまくったことかな〜私をへんな目で見てくる人が多くて、それで襲ってくる人も多かったからそいつらを全員殺していったな、でも竜二は別だよ?私をへんな目で見ても襲って来ても大歓迎だよ、私はとても嬉しいな、でも我慢できなくて私が襲っちゃいそうで今も怖いよ〜」



「やっぱり殺人鬼は救えない!そいつらは確かにクズだだけど殺す必要なんてない!でもお前は殺されて当然な存在だ!今俺はお前を殺す!」



俺は左腰に収めている鋼の剣を抜き、殺人鬼に向かって剣を刺そうとする、が、後数センチのところで剣が止まり、それ以上剣が前に進まない。



「竜二に私は殺せないよ、竜二は人を殺せないんだもん。どんなに酷いことを受けようとも私が憎くても殺せない、竜二は優しい人だから殺せない」



「なんで、なんで、俺はこれ以上手が前に出ないんだ、こんなに憎くて復讐したかったのに、くそ!くそが!」



俺は泣いた、憎くてしょうがない相手を前にしても俺は何もできない、あいつも報われない、ここでも俺は自分が可愛いんだ、、、。



「竜二、私を殺さないと竜二の周りにいる女の子を私が殺しちゃうよ?それでも竜二は殺せないの?やっぱり竜二は優しい...それと臆病」



「俺は臆病だ、だけど、だけど、だけど、だけど、俺は俺は!復讐のためあいつのため俺はお前を殺す!」



剣を少しずつ少しずつ前に進める。泣きながら、でも、殺さないといけない!ここで俺がこいつを殺さなければまた人がたくさん死ぬ、エリシアもアリシャも殺される。だから俺は今、今!


後数ミリとあったところで、殺人鬼は手で鋼の剣を持ち、止まらせる。その手には血が出ている。



「私は竜二が大好き、だからまた会いましょう、いつでも、私のところに来ていいからね!どこでも、どんな時でも竜二のことを私は見ているから、それじゃもう行かないといけない、じゃあね愛しの竜二...」



一瞬にして殺人鬼が消え、俺はそのまま前へ倒れこむ。

俺は躊躇してしまったんだ、自分可愛さに、あんなことがあったって言うのに、憎き相手を前にして、殺せなかった俺は臆病だ。

だが、あいつは殺人鬼、でも俺はそれ以下だ何もさらけずに自分の殻にこもっている本当に俺は根本的に何も変わっていない。

この先、リアを助け、殺人鬼を殺し、復讐神ティシフォネを殺さなくてはならない、だからここでくじけてはならない!俺は前へ前へと進む。虚ろになりながらも前へ前へとエリシアやアリシャがいる宿屋に戻る。

絶対に二人は殺させない!俺の命に代えても!


俺が宿屋に戻るときにはアリシャが寝ていて、エリシアが窓を開けて、夜風に当たっていた。



「やー竜二、遅かったね、魔法は試せたか?」



月明かりの下、風呂上がりか、髪や、肌が艶やかに照らされいつもより美しいかった。



「ばっちり試せたよ、でも魔法を使ったら想像以上に周りを破壊しちゃって、明日どうなるやら」



俺は今の気持ちをエリシアに悟られてはならない。

俺が今どんな顔をしているかわからない。

俺は俯きながらエリシアと話す。



「それはまずいね...明日ちゃんと協会に謝るんだよ!わかった?」



「わかった、明日謝りに行く。今日は疲れたし俺はそろそろ寝るよ、明日もあるし」



明日はシャークとの決闘が待っている、くよくよしてはならないのに気持ちがそれを阻止する。



「そう、でも竜二待って、もしかしてさっきなんかあったの?」



エリシアに悟られてしまった。だが、隠さないといけない、何が何でも話せない。



「いや、なんでもない。心配かけてごめん。それじゃエリシアおやすみ」



俺はエリシアに笑顔で応えた、だが、それが笑えているのか笑えてないのかわからない。

でもエリシアの表情から俺がどんな顔をしていたのかは想像出来た。

俺はアリシャが寝ているベットに潜り込んだ。

だけど全然寝付けない、まだエリシアは夜風にあたっているんだろうか?ふと、エリシアの声が俺の耳に伝えた。



「竜二、私ね、昔は弱かったの、とってもとっても...だけどある時、ある人に言われたんだ、だから私も竜二に言う。「この世界は残酷だ、だけど逃げ出してはならない、足掻いて足掻いて、自分の道を見つけて、それでもダメだった時は泣きなさい、泣いて気持ちを吐き出して、また、明日から探していけばいい」そう言われて私は少し強くなれた、救われた、だから竜二もそんな辛い顔しないで、何があったのかわからないけど、私は竜二の味方だから...それにアリシャだっているし!って寝ちゃったか...」



それはそれは切なくて悲しい声だった。

俺はエリシアに背を向け、一人号泣するのであった。涙が止まらなく、こんなに泣いたのは久しぶりのことで色々過去が脳裏に浮かんでくる、リアが死んだことやティシフォネに裏切られたこと、俺の彼女を殺されたこと、それらの節々を思い返して俺は泣いた。エリシアには聞こえないように布団に覆い被さる。


それからエリシアは数分夜空を眺めてから布団に入った、俺は必然的に真ん中にされてしまい、二人の吐息や俺の体にくっついて来たのでとてもじゃないが眠れなかった。


俺はエリシアがどんなものを見ていたのかを気になり、目を開け、窓から見える夜空を眺めた、無数に広がる星たちや満月が輝いていてより一層綺麗だった。夜空を見ると何故か気持ちが落ち着いた。

明日からは気持ちを切り替えよう、たくさん泣いたし、新たな俺として迎えよう。

そう思い俺は目を閉じた、だが結局ねれなかった。それにしてもアリシャのいびきがうるさい!


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