第3話 出会い〜奴隷か仲間か
扉から出た先は緑に輝く広い高原、風がなびくたび、草やその周りの木々が揺れ、世界に1人だけかのように思ってしまうほど、美しい。
俺は黒い服にローブを羽織り、左腰には聖剣エクスカリバーを携えているという状態だ。
焼き付けるほどに熱い太陽、今は太陽が真上にあるので時間は正午ぐらいか。
それにしても風が気持ちいい。田舎に行くとよく言われる、空気がうまいとはこのことだろうか。
「さて、まずは宿を見つけることからだな」
俺は異世界に来た、そして、目標は魔王を倒すこと、それと倒せばもとの世界に戻れるとティシフォネは言った。異世界に来て興奮し、楽しみなことばかりだが、俺には中学から付き合っている彼女がいる、彼女に会いたいし、彼女を悲しませたくない、その気持ちが俺に力を与えていた。彼女が別の誰かと付き合ってしまうのではないだろうかと心配ではあるが。
だが、俺の最初の目標は双葉明日香を殺すことだ。俺を散々刺しまくったあいつに仕返しをしてやる。
何度も何度も刺して刺して痛めつけてから殺してやる。
俺はもう一度、覚悟を決め、歩み出す時、
どこからか聞き覚えのない声がした。
「我が主人さま...」
⁈俺はどこから、この声がするのかを探してみることにする、だがどこにもいない。
「ここですよ!我が主人さま!」
いきなりジャンプして姿を現わすので少し驚いてしまった。
「うわ、いきなり誰だ!ってかちっちゃ過ぎて見えなかったぞ!後、主人ってなんだよ」
俺はいきなり姿を現した少女に驚きのあまり、腰が引けてしまった。
その子は身長が140センチぐらいだろう、俺が178センチなので小さ過ぎて見えないわけだ。
純粋無垢な青い瞳だがどこか寂しげをもたらしており、綺麗に整った顔、白い髪の毛、シミひとつない綺麗な肌、その上にボタンで止める白い半袖でを来ており、ズボンも白く少しぶかぶかだ、それと猫耳がついて、尻尾が出ていて、とても美少女だ。
もふもふしてみたい...。
いわゆるケットシーというやつではないだろうか。
「すみませぬ、このような形でしか存在を表せなかったゆえに。改めまして、私はリア、我が主人はあなた、竜二さまでございます。神、ティシフォネの名により竜二さまにお供させていただきます。なんなりとご命令して下さい。私は竜二さまの奴隷とでも思ってもらって構いません。それと、言わせてもらいますが、小さいなんてひどいですよ!私は成長期ですから!これからですから!」
この子は自分のコンプレックスを言われると強気になる性格らしい。
「おい、それ聞いてないんだが、俺のお供、奴隷⁈は?ティシフォネが頼んだって?」
俺は突然のことで理解が追いつかない。
「はい、ティシフォネ様がゆうにはサプライズプレゼントらしいです」
リアと名乗る子は膝を立て、その上に腕を置き、一礼する。
「はぁー」
俺はため息をつきつつ、頭を抱え幻滅する。
俺はティシフォネに弄ばれてたってことかよ。
「はいはい、大体は理解した。それでお前は本当にそれで良いのかよ?主人の命令に従って、自分を奴隷と評してまで自分の身を捧げて」
「良いのです。私はティシフォネ様の命令に従うことが唯一の救いになりますので」
一礼したまま一向に顔を上げない。
「ちげぇーよ、お前の本心はどうだって事だよ」
「私は、私は...昔、私は魔王に一族を滅ぼされかけました、その時助けてくれたのがティシフォネ様でした、皆の傷を治し、癒し、魔王を追い払ってくれたんです。ですから、私はティシフォネ様にはその恩返しをしたいんです、命の恩人なんです、だから、だから、竜二様のそばに置かせてはくれないでしょうか?」
やっと顔を上げたかに思えば、すぐにまた一礼をし、問おてくる。
「そうか、お前の理由はわかった。だがお前は奴隷なんかじゃない」
「んっ?」
リアは何を言われているのか理解出来ず、とぼけ顔でこちらを見てくる。
「奴隷なんかじゃないんだよ!なにより自分の身を大切にしろよ!よし、決めたこれからはお前は仲間だ!同じ目標を持つ仲間だ!一生奴隷とは言わせない!一緒に魔王を完膚なきまでに痛めつけようぜ」
「仲間ですか、仲間、仲間、初めて言われました!凄く嬉しいです!私も魔王退治に協力させていただきます」
リアは少し涙ぐみながら満面の笑みだったがそれ以上に嬉しい様子だった。
「それならまずは自己紹介だ、俺は佐倉竜二、竜二と気軽に呼んでくれ」
「む、む、無理です!お仕えする身でありながら竜二様をよ...呼び捨てにするなど、で...出来ませぬ」
即否定され少し落ち込む。
「仲間だろ?仲間っていうのはいかなる時も助け、助け合うものなんだよ、だから、様をつけるなんてやめてくれ」
「ですが...いえ、そうですね。仲間ですもんね。わかりました。では試しに一回、呼んでみてもよろしいでしょうか?」
少しリアは勇気を振り絞り、決意を決めた様子だ。
「おう」
「りゅ、竜二......っ」
頬を真っ赤に染め、尻尾をバタバタさせながら恥ずかしがりながら言った。
か、可愛い、可愛すぎる。もふもふしたい...
「よろしくな、リア」
リアの返答に俺は威勢良く答える。
「はい!よろしくです!」
2人は笑顔を交わして、握手ではなく、ハグをした。
「リ、リア?なぜ抱きつくんだ?」
突然、飛び込んできて、リアの行動に少し驚くが、
小さいが確かにある胸が当たり、抱きしめられた感覚がすごく気持ちいい。
「なぜと言われましても、私がこうしたいんです。殿方はこうすると喜んでくれると言っていたのですが、ご、ご迷惑でしょうか?」
「い、いやそんなことないぞ。それと...」
「はい、何でしょうか?」
「この猫耳触ってもいいか?嫌ではなければだが」
「嫌だなんて...す、少し恥ずかしいですが、い、いですよ」
戸惑いを隠せず、顔を真っ赤に染める。
「では」
真下にある猫耳を触り、猫耳の中まで手を入れ、猫耳全体を撫でた、猫のもふもふよりも猫耳の方がより触り心地がよく、いつまでも触っていたい。
「ひぃやっっ、あっっ、あっっ」
この手は止まらず、激しく、もふもふを堪能する。
「ひゃっー、あっ、あっ、らめっ、ひゃっっっっあっっっーー」
流石にやばいと思い、手を離すと、はー、はーとと息を吐きながら、リアは顔を火照らせて、股の間に手を入れて足をクロスした状態になっている。この姿を見るとすごくエロい、俺もへんな気持ちになりそうだ。
「だ、大丈夫か?その、なんてゆうか、悪かった」
俺は少し赤い頬を掻きながら、視線を彷徨わせ、弁明する。
「い、いえ。すごく嬉しいです。殿方に触られたことは一度もなかったので...それで、竜二はどうでしたか?その、私の耳の感触は...」
「もふもふ感が触り心地よくて、いつまでも触っていたかったぞ」
「それは良かったです...ではどうぞ」
リアはもう一度だと思い猫耳を差し出すが、俺は戸惑いながらも否定する。
「ち、違う、もちろんずっと触っていたいが、そういう意味で言ったのではなく、いつまでも触っていたいほど気持ちよかったという意味で」
リアは少し戸惑いながらも自分が誤解したことに気づき、白い服で口元を隠した。
「はい...」
「それよか、早く行こうぜ、街へ」
俺は街へ行こうと歩き出した。
「はい!」
リアも俺の後について、歩き出した。
それよりも威勢良く歩き出したが、俺は街がどこにあるのかわからないことに気づく。
「リア、ちなみに街の場所ってどこか分かるか?」
「わかります。ティシフォネ様にこの地域の場所については叩き込まれていますから」
俺はリアが場所を知っているということなのでひとまずホッとする。
「そうか、では教えてくれ」
「ですが...」
「どうした?」
「ここから近くの街に行くには早くとも3日はかかります」
「なんだとーーー!」
神の部屋というものの扉から出て来たのに、そこから街まで3日かかるとは、ティシフォネはどんなとこに扉を作ったんだよー、とティシフォネを俺は恨んだ。
俺は大きなる一歩を踏み出す。それが良かったのか良くなかったのかはまだわからない。
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