第1話 転校生
「氷室小織です。今日からこのクラスで皆さんと共に勉強させていただきます。宜しくお願いします。」
夏休みを目前とした7月上旬の中途半端な時期に転校してきたその少女は
氷室小織は肩甲骨まである綺麗な黒髪のロングヘアーで整った顔立ちをしていた、そんなんだから休み時間になるとクラスのみんなが彼女に話しかけてきた。
「何処から来たの?」
「好きなものは?」
「部活何入るか決めてる?」
「ねえ連絡先教えてよ」
しかし、そんな数多くの質問に対して小織は笑顔を向けるだけだった。
ただ1人を除いては
「氷室小織だっけ?」
そう話しかけたのは透間幽莉だった。整った顔立ちに一八〇を超える長身、股下も長く、程よい筋肉、それでいて金髪。クラスでもひと際目立つ存在の彼に話しかけられた小織はその時初めて口を開いた。
「あなたは?」
「俺の名前は透間幽莉」
「透間幽莉さん」
「気軽にユーリって呼んでくれ」
「ユーリさん?」
「まだ少し堅い気もするけど、、、」
うーんと自分の顎に親指と人差し指を添えて少し考える。
「まあ、無理に強制するのは俺が嫌だしな、それでいいぜ」
「ところで小織」
突然下の名前を呼び捨てにされて少し困惑した。嫌なわけではない、ただ単純に驚いただけだ。
「なんですか?」
「今日の放課後パーティーするんだけど来いよ」
「パーティー?」
「お前の歓迎会に決まってんだろ、お前らも来るよな」
そう言って辺りを見渡す。
視線を向けられたクラスの面々が盛り上がりを見せた。
「もちろん行くぜ」
「俺も」
「私も」
「うちの店来るか?」
「いいねー」
「またかよ
「嫌ならお前はパスだな」
ワハハハハハハとクラスが笑いに包まれた。
断れる雰囲気ではなかった。最初から断るつもりもなかった。何故なら最初から氷室小織は透間幽莉に近づく為に名を変え姿を変えてやって来たのだから。
そう、だから勿論歓迎会の帰り道が一緒で二人きりになったのも偶然ではないのだ。
「透間幽莉」
学校の時や、先ほどまでの歓迎会とはガラリと雰囲気が変わって何処か力強い声。
「どうしたんだ急に?雰囲気違くないか」
「貴様に話があって来た」
告白でもされるのか、だとしたらこいつで何人目だろう。そう暢気に頭の中で指折り数えていたらそれは起こった。
何かが幽莉の腹を背中から貫いた。赤い血と内臓、先ほど食べたものが胃の中でグチャグチャに混ざり合ったもの、そして何者かの手が腹から飛び出してきた。
しかしそれを透間幽莉が目にする事はなかった。何故なら彼はこの時既に死んでいたのだから
「マスター。マスター応答を」
耳につけた通信機に向けて氷室小織は、いやコオリ・スタンフィールドは叫んだ
「うるさいなあ。そんなに叫ばなくても聞こえてるっての。で、どうしたの?」
相変わらず緊張感のない声が通信機の向こうから聞こえてきた。
「勇者様。勇者様」
目が覚めると目の前には尖った耳の美少女の顔。そしてそのすぐ下には服の上からでも判るくらい大きく膨らんだ胸が見えた。
誰だこいつ?そう思いながら手は自然と動いていた。目の前にあるそれを掴もうと伸ばした手はそのまま目の前の少女の体をすり抜けた。
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