第294話


「さて・・・、と」


 俺は飛龍達の魔石をアイテムポーチへと収め、辺りへの警戒を強めた。

 あれだけの轟音だ、他の飛龍達、或いは正体の分からない敵?にも、気付かれていると考えるべきだろう。


(なるべく、罠を仕掛け終えている此処ら辺で闘いたい)


「ん?」


 耳に流れて来る風を打つ音。


「此れは飛龍のものか・・・」


 飛龍達は自らの領域への侵入者には対応するという事だろう。


「・・・良しっ」


 俺は飛龍達の死骸の下に魔法陣を仕掛け、木々の影に身を潜めた。


(来たか・・・)


 5分と待たずに、7匹の飛龍達が飛来した。


(だけど・・・)


 2匹の飛龍が死骸へと寄ったが、他は上空から周囲を警戒していた。


(時間を掛ければ、俺に気付かれる・・・)


 あと2、3匹巻き込みたかったが、此の2匹も上空へ戻れば、罠が無に帰してしまう。

 俺はそう考え魔法陣から登る火柱の位置を考え、上空の飛龍達の死角に狙いを付けた。


「・・・行けっ‼︎」


 魔法陣を発動させた俺。


「ッ⁈」


 轟音と爆炎が立ち、其れに隠れる様にし、狙いを付けていた飛龍達との間に爆炎の柱を置いた俺。


「幻ッ‼︎」


 俺は自身の分身ともいうべき、3体の闇の残像を生み出す。


「剣ッ‼︎」


 立ち昇る黒煙を隠れ蓑にし、上空の飛龍達へと無数の闇の剣をばら撒く。


(やったか・・・)


 俺は足裏に伝わって来る僅かな振動に、1、2匹の飛龍を墜とした事を確信した。


(それなら・・・)


 俺は首元のネックレスに手を掛け、剣へと変化させ・・・。


「装ッ‼︎」


 其の刃に漆黒の闇を纏わせる。

 やがて立ち昇っていた黒煙が晴れて行き・・・。


「剣ッ」


 俺は突撃に備え、自身の背に漆黒の剣を生み出し浮遊させる。

 やがて黒煙の晴れた先、上空には3匹の飛龍達が居た。


「行けえぇぇぇ‼︎」

「ッ⁈」


 残像達と共に一気に空へと翔ける。


「はあぁぁぁ‼︎」


 迎撃態勢を取る飛龍達に残像達を差し向け、俺は飛龍達を通り過ぎ、頭上を取った。


「ガアァァァーーー‼︎」


 残像を喰らい散らす飛龍。


「ゴオォォォンンン‼︎」


 霧散する残像に勝利の雄叫びを上げる飛龍。


「吠えるな・・・」

「ガッ・・・」

「よおぉぉぉ⁈」


 背に浮遊させた漆黒の剣で翼を裂き、バランスを崩した飛龍の首を手にした得物で斬り落とす。


「ッッッーーー」

「っ⁈」


 ドワーフ達に蘇らせて貰った剣。

 其の斬れ味は以前の物とは次元の違うもので、墜ちて行く飛龍を眺めながら、一瞬驚きで身体が固まってしまった。


「ガアァァァーーー‼︎」

「・・・っ」


 残り2匹の飛龍達は既に残像を散らしていて、俺の隙を逃さず襲い掛かって来た。


「大楯ーーー‼︎」

「グゥゥゥーーー‼︎」


 俺は突撃して来た飛龍達との間に、漆黒の楯を置き、其れを防ぐ。


「っーーー‼︎」


 俺は高度を僅かに下げ宙を翔け、飛龍の腹下へと滑り込み・・・。


「貰っ・・・、たあぁぁぁ‼︎」


 腹に剣を刺し、翼に魔力を込め翔ける力で腹を斬り裂いた。


「ギャーーーオオオンンン‼︎」

「剣ッ‼︎」

「ッ⁈」

「行くぞっ‼︎」


 再び背に漆黒の剣を浮遊させ、今まさに墜ちて行く飛龍の背を足で蹴り、上空へと翔け昇る。


「グッ・・・」

「やらせるかっ‼︎衣ッ‼︎」

「ッ⁈」


 口元に俺へと放つ為に炎を貯めた飛龍。

 俺は其の口元を闇の衣で叩き、貯め様としていた炎を散らした。


「此れで・・・」

「ガ・・・」


 飛龍へと翔け、其の肩口、そして翼を漆黒の剣で斬りつけ、自身は闇の翼に大量の魔力を注ぎ高速で飛龍の頭上を取る。


「終わりだあぁぁぁーーー‼︎」


 空気の壁を蹴り飛龍へと急速降下し、其の勢いで首を斬り落とす。


「ッッッ・・・」


 首を落とされた飛龍は悲鳴を上げる事も出来ず、静寂の中大地へと墜ちて行くのだった。


「終わった・・・、か」


 俺はアイテムポーチから魔力回復薬を取り出し、飲み干しながら地上へと降りて行った。


「・・・ふぅ〜」


 俺は戦闘の緊張から解放されたのと、回復した魔力に安堵の溜息を吐いた。


「・・・ん?」


 其れも束の間のものらしく、俺の耳には再び風を打つ音が聞こえて来た。


「・・・行くかぁ」


 その後日暮れ迄、飛龍達と数えるのも面倒な連戦で、結局俺は合計37匹の飛龍を狩ったのだった。

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