第248話
「それにしても・・・」
街に並ぶ露店は本当に食べ物から、雑貨迄色々な品物が有った。
「どうですかっ、お兄さんっ」
「ん?」
背中から掛かった威勢の良い声に、振り向くと其処には海産の乾物を広げた露天商の親父がいた。
「え〜と?」
「そうだよっ、色男っ」
「はは・・・」
俺が自分を指差すと、親父はミエミエのお世辞を言って来た。
(まぁ、復興の助けには地産品を買うのが一番だろうし・・・)
「じゃあ、オススメを見繕って下さい」
「へいっ‼︎」
こうして、乾物を皮切りに、俺は露店巡りを始めたのだった。
「ふぅ〜、買ったなぁ・・・」
買った品物は、すぐにアイテムポーチに入れていった為、分かりづらかったが、俺はかなりの量の土産を買い込んでいた。
まぁ、8割食品だったが、アンが居るし、ルチルも呼べばすぐに消費出来るだろう。
「あれ?司じゃない?」
「ん?アルメじゃないか、どうして?」
「はは、こっちの台詞だよ」
2年になって学院に行く事自体少なかったが、学科も離れた事でより会う事の減っていたアルメ。
意外な場所での再会に俺は驚いたが、アルメの方は俺が此処に居る事の方を不思議がった。
「俺は・・・、まぁ色々と」
「はは、何だい、それ」
「アルメこそ、何で?」
「僕はバイト兼、将来の就職先にと思って」
「あっ、なるほど」
「そういう事」
アルメの言葉に、何故彼が此処に居る事を当然の様に言うのか、やっと合点がいった。
(アルメは騎士志望だったんだよな・・・)
「上手く行きそうか?」
「う〜ん、どうだろう?ただ、此処以外にも、旧フェーブル辺境伯領やリアタフテ領も、軍の増員は多いからね」
「じゃあ、学院の騎士コースは?」
「うん。僕等の学年迄は就職に困る事は無さそうだよ」
「そうか、良かったな」
「うん」
紛争続きが良い事では無いのだが、その結果アルメは就職先は選び放題らしかった。
「でも、サンクテュエールには残らないんだな?」
「う〜ん、まだ決めて無いんだけどね」
「こっちが第1志望なのか?」
「出来ればね」
意外な選択だと思った。
ディシプルは結局、今回の件で、実質サンクテュエールの属国になった為、ディシプル国内にサンクテュエールの駐留軍を置くのだが、軍内部での地位は低く、出世コースとは言えないのだが・・・。
そんな俺の疑問に気付いたのか、アルメはその理由を告げて来た。
「フォール将軍の下で仕事をしてみたいんだ」
「あぁ、そういう事か」
「うん」
「そういえば、憧れの人なんだな」
「うん」
瞳を輝かせ答えるアルメ。
俺は其の純粋な瞳に、心の中で彼の目標が達成出来る事を祈った。
「イケメンは得だなぁ・・・」
「え?どうかしたの?」
「いや、こっちの話だよ」
「はは、そう?」
「でも、バイトってどんな任務なんだ?」
「街の警備兼、違法露店の摘発だよ」
「違法露店?」
「うん。届出の無い露店も有るからね」
「へぇ〜?」
アルメ曰く現在、このディシプルでは復興の為、一時的に税の免除を行なっているらしく、それに乗じて他地域などから違法な商人が潜り込んでいるとの事だった。
「多いのか?」
「うん。まだ戦後数日なんだけどね」
「・・・」
「それで、今も通報の有った店に行くところなんだ」
「そうかぁ」
アルメによると荒事になった話は殆ど無いらしく、魔物狩りに比べると安全な任務という事だった。
「じゃあ、行くね?」
「あっ、待ってくれ」
「どうかしたの?」
「俺も付き合って良いか?」
「え?うん、大丈夫だけど?」
「悪いな、ちょっと興味が有って」
「そう?じゃあ行こうか」
俺は軍人になるつもりは無いが、此方に来て既に2度の紛争に関わっている事もあり、後学の為にアルメの仕事に同行させて貰う事にしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます