第80話~終わり良ければ全て良し!だよね

 大きな木を前にして、私は意を決した。

 モーグの森の頂上は、白っぽい岩肌で、小さな草や花がまばらに咲いているだけのそんな土地。


 「これからロウさんに認めて頂く為に、魔法陣である物をプレゼントさせて頂きます!」


 私が宣言すると、ふくろうの姿で木に止まっているロウさんは、カワイク首を傾げる。

 まずはクワを作る。粘土は大量に作って持って来てあった。

 だから、私は釜の魔法陣を描く。ユージさんは、粘土をクワの形に作って行きます。

 今回のクワは、先の刃の部分は、魔石を大きく砕いて粘土で包みます。大きく砕くのが結構大変だっだけど、ユージさんがしてくれました。下準備として、それを粘土で包むところまでやって、持って来ています。


 釜の魔法陣にクワの形の粘土を入れて、五分後クワの出来上がりです。

 その過程を何も言わず、ロウさんは見つめています。


 「すごーい! 普通に力いらないぐらいでおこせるよ!」


 ユージさんは嬉しそうに、どんどん岩を畑に変えていきます!

 白っぽかった地面は、黒っぽく変わっていきました。


 私はその間に、どんな土でも畑に適した土にしてくれる魔法陣を描きます。

 ごつごつした岩場で描きづらいので、黒板を引っ張り出し描きました。


 二時間後、ユージさんが丸く作った畑を魔法陣の鏡の先で丸く囲います。

 そして描いた魔法陣を畑に転写。成功です!


 「三時間ほどお待ち頂けますか?」


 ユージさんが言うと、ロウさんは畑の上を飛び回ります。

 きっと何だろうと確認しているんだと思う。

 そして人の姿で私達の前に降りました。


 「そのクワは、この岩すら畑にするのだな」


 それだけでもロウさんは、驚いたようです。


 「はい。彼女の手に掛かれば、これぐらいは朝飯前です」


 いやそれはちょっと言い過ぎでは。

 おじいちゃんが残してくれた本のお蔭なんだけどね。本当は!



 ◇



 「こ、これは!」


 三時間後、ロウさんは驚いていました。

 その間に虹の刻が訪れ、水分を吸った畑は一層黒く色づく。


 「いかがでしょうか?」


 まだ雨があがって間もない畑を指差し、ユージさんが聞いた。

 これでダメならお手上げです。


 「うむ。みごとだ! 君達を認めよう!」

 「やったぁ!!」


 私がばんざいと喜ぶと、ユージさんは私の脇を持って体を持ち上げると、くるくるとその場で回転!

 嬉しいのはわかるけど、私はお子様じゃないってば!


 「これなら大丈夫だ。ありがとう!」


 ロウさんは嬉しそうに言った。

 って、早速ロウさんはフクロウになりミミズをぱくり!

 他の鳥も来てぱくり!

 しばらく私達は、ほおっておかれました。


 何とか乗り切った私達は、その日は前日のカカヲ鉱石を交換しログアウトした。



 ◇



 次の日からは、畑で収穫、迷宮でカカヲ鉱石の発掘、カウンターで交換を繰り返しギリギリ最終日に、レベル5のカカヲの実を収穫予定です。

 畑にはユージさん一人で向かってもらって、私は一人こっそりと部屋でいつものお礼にチョコレートを作ります!


 こっそりと買って置いたチョコレートの丸型のケースに、砕いたカカヲの実とミルクを入れます。

 ミルクも買っておきました。ユージさんが、ラキガさんにカカヲ鉱石を持って行った日です。


 さて、ここで魔法陣の出番です!

 冷やす魔法陣があったのです! 釜の逆ですね!

 早速描き、チョコを乗せます。これも五分待つと出来上がりです!


 後はトッピング用に、イチゴとカカヲの実を混ぜます。水分があるのでミルクなどを入れなくても、とろとろの状態になります。

 絞り袋に直接入れて……。


 チョコが出来たようです。

 ……あれ? カチカチ?

 まあ、渡す時にはちょうどよくなっているよね!


 後は、少し赤みを帯びたチョコで、文字を書く。

 いつもありがとう


 ……うーん。チョコ一面に大きくなってしまった。

 結構難しいものね。

 後は、ラッピング。

 箱に入れて、リボンをして。

 はい! 出来上がり!


 ユージさん、喜んでくれるかな?



 ◇



 「ただいま!」


 魔法陣からシュッと現れたユージさんは、嬉しそうです。

 うまくいっていれば、カカヲの実は二つ収穫できているはず。


 「二個収穫出来たよ。ほら」


 手には、あの可愛いサイズのカカヲの実が二つ。


 「あんなに苦労してもレベル5のは、二個しかできなかったね」

 「うん。ありがとうユージさん」

 「はい。あーん」

 「え……」


 いや普通、逆じゃないかな?

 ユージさんは、カカヲの実を一つつまんで、あーんて言ってきた。

 誰も見ていないとはいえ、恥ずかしいんだけど!

 でも今回、凄く頑張ってくれたし、いいか。

 私が口を開くと、カカヲの実がポンと入って来た。

 確かに、チョコの様に甘いです!


 《チョコUPを取得しました》


 「はい。あーん」


 私もサービスで、屈んだユージさんのお口にカカヲの実を入れました。


 「あ、チョコUPだって」

 「同じ!」


 私も同じだと言って、ステータスを確認してみます。


 HP:1,105/100(+2,000)

 STR:21       握力:120

 VIT:4,269+8,200   視力:120

 AGI:21+2,000    聴力:125

 DEX:21+4,000    読解力:120

 INT:21       創造力:40,022+400

 MND:21+2,000

 LUK:24,802+5,000


 今回はDEXに付加がついたみたい。創造力が増えたのがチョコUPの効果なのかな?

 あ、そうだった!


 「ユージさん。これ……」


 私がそっと、ラッピングしたチョコを手に持って渡そうと出すと、すごくビックリしています!


 「いつもありがとう。下手だけど一応手作りです」

 「え? ぼ、僕に!?」


 私が頷くと、受け取るとむぎゅーと抱きしめられてしまった!


 「あ、ごめん。つい嬉しくって! え、じゃあげたカカヲの実ってこれに使ったの?」

 「うん」


 ユージさんは、嬉しそうにラッピングをはがし、丸いチョコレートじーっと見つめる。まるで、食べるのが勿体ないという顔をしてます。


 「食べてみていい?」


 私が頷くと、ガッツ!! っという音と共に一瞬ユージさんの動きが止まりました。


 「もしかしてこれ、魔法陣で凍らせたとか?」


 目を泳がせて私は頷く。

 チョコには、歯形さえなかった。いやこの世界に、歯形の設定がないだけかも!


 「やっぱり。でもソレイユさんらしいや! これは記念に取っておくね!」

 「え?! 食べていいよ!」

 「魔法や魔法陣で凍らせたものは、大抵は同じ方法で解凍しないといけないはずだよ」

 「え~!!」


 あぁ。そんな注意書きないから知らなかったよ。って、それが普通なら書かないか。

 ユージさんは、嬉しそうに箱にチョコをしまうと、ラッピングも綺麗にしなおして、自分のリュックにしまった。

 ちょっと大変な事もあったけど、楽しいイベントでした――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る