第38話~キノコ狩り?

 くて~ん。

 私達は初仕事を終え、ギルドの部屋に戻って来ていた。迎え合わせに椅子に座り、疲れ切った顔でぐったりです。


 「なんでかなぁ……。何故かトラブルばかり……」

 「なんでだろうね……。いや、今回は貢献してる! ううん。考えてみれば、魔石を発見したのだって貢献してるって!」

 「うーん。そうなのかな……」

 「兎に角、★集めてワープをゲットしようよ。そうしたらいざとなれば逃げられるし」


 確かにそうかもしれないけど、それまでにトラブルがありそうで……。


 「そういう事で、今日はもうログアウトして明日INしよう! 次INする時は年が明けてるから気分一新で」

 「うん。そうだね」


 私達はベットに潜りログアウトした。


 そして年が明けて5226年4日にINをすると、ユージさんはもうINしていてガリガリと魔石を臼で粉にしていた。



 「あ、おはよう」

 「おはよう。粉にしてたんだ」

 「うん。暇だし。じゃ、見てみようか」


 私はユージさんの膝の上に座った。

 なんか定位置になりつつあるですけど……。


 ユージさんは、タブレットを操作して手ごろなのを探す。


 「あ、キノコの採取だって」

 「本当だ」


 言わずとも私達は、迷宮を避けたい気分だった。事あるごとに避けていると出来る事がなくなって行くんだけどね。


 ユージさんは、詳細を開いた。


 採取者カード保持者がいる事が条件になっている。これなら出来ます!


 「これにする?」


 私がチラッと見あげると、ユージさんが聞いて来たので頷いた。


 場所は行った事ない所だけど、地図もあるしタブレットでも確認出来た。

 依頼を引き受け、カウンターでキノコを入れる袋を受け取り目的地を目指す。



 ◇



 私達はキノコを目の前にして困っていた。普通にあるけば五分程の所に見えるキノコ。でもそれは、沼の中だったのです!


 ユージさんが試しに足を踏み入れてみると、踝を軽く超え足が沈んでいく。途中急に深くなったり、抜けなくなったら大変です。


 「さてどうしたものか……」

 「あ、こういう時こそ、おじいちゃんの本だよね?」


 何か載っているかもしれない!

 私は本を取り出そうと、リュックを下ろす。


 「そっか! 板、大きな板を作って!」


 ユージさんが叫んだ。

 なるほど板の上に乗って移動するのね。


 でも魔法陣を描ける場所が近くにない。

 私達はまず、魔法陣を描ける場所を探した。


 20分ほど探すと、少しだけ開けた場所を発見。

 そこで魔法陣を描く事にしました。


 ユージさんは粘土を作る為に、土に魔石を混ぜます。

 そして描き終わった魔法陣の中に入れ、粘土の完成です!


 何となく役割が出来てきている。

 次に窯の魔法陣を描いている間に、ユージさんが粘土を平らにして板を作成。

 二人で粘土を持ち上げて、魔法陣の中へ。

 今回の魔法陣は大きく描き、ちょっぴり大変でした。

 そして無事に板の完成です!


 「出来た!」

 「この魔法陣で作る物って、臼のようなものでなければ、軽くていいよね」


 ユージさんはひょいっと板を持ち上げ言った。


 「うん。後は手頃の枝を探すだけだね」


 板を動かす為の出来るだけ長く、丈夫そうな枝を探しながら沼に向かった。


 二本欲しいところだけど、長いのが見つからず、一本でやってみる事になりました。

 ユージさんが沼に板を乗せて私を板の上に。そして自らも板の上に乗った。沈まないかドキドキしたけど大丈夫だった。

 ユージさんが沼に枝を入れて押すと少しずつキノコに向けて進んで行く。


 「ユージさん、大丈夫? 途中で代わる?」

 「うん? 大丈夫だよ。それより真っ直ぐ進んでいるかな?」

 「うん。ユージさん操縦上手!」


 ほどなくしてキノコに到着です。

 キノコが棲息している場所は何故か、土が他のところより固いみたい。


 「うーん、他のところより土は固いけど、僕だと沈みそうだね」

 「じゃ、私が乗ってみる」


 ユージさんと手を繋ぎ、そっと土の上に降り立つ。少し沈む程度で大丈夫そう。


 「私が奥のキノコ採るね」

 「大丈夫?」


 私が頷くと、枝を差し出して来た。


 「もしもの為に持って行って。無理しないでね」

 「うん。ありがとう」


 袋と棒を持ち私はキノコが群生している中に入って、キノコ狩りを決行です。

 ユージさんは、手が届くところのキノコを採って板の上に置き、私は手あたり次第袋に詰め込んでいく。袋は私が膝を抱えて入れるぐらいの大きさ。結構量が入ります。


 「そうだ! キノコ詰め込めすぎないようにね! 持てなくなるかもしれないから!」


 ユージさんが叫んだ。

 袋にはキノコが半分ほど入ったところ。持ち上げてみると持ち上がった。一旦それを持って、ユージさんの所に戻った。


 「ここに置いておくわ」


 今のところ沈まなそうなので、袋はユージさんの手が届く場所に置きキノコを採っては袋まで戻った。

 三十分ほどでいっぱいになったので、私達は引き返す事にする。


 「キノコの重さで沈まないかな?」

 「大丈夫だとは思うけど……」


 そう返事を返しユージさんは、枝で板を進めて行って無事私達は沼から戻ったのでした。


 「何とかなったね。さて板どうする?」

 「どうしましょうか」


 板は軽いので私でも持てるかもだけど、大きいので結局持てない。キノコも重そうでユージさんが持つことになるだろうから、板もとなるとユージさんが両方持つ事になる。


 「使うかなそれ?」


 私はユージさんに言った。

 使わないなら置いて行ってもいいかなって。


 「これ以外には使わないかもね。土と魔法陣を描く場所さえあれば、時間はとるけど都度作った方が僕的にはいいかな」


 そういう事で板は、草の中に隠しておいた。

 ちょっと大変だけど、この依頼はこなせる事がわかったので、またあれば受ける事にして、置いて行く事になりました。

 枝は持って帰る事になり、持ちづらいけどそれは私が持って戻る事にする。



 ◇



 「いやぁ、凄いね君達。知らないで受けてその日のうちに終わらせるなんて!」


 戻ってキノコが入った袋を渡した時の係りのお兄さんのセリフです。

 私達は顔を見合わせた。


 「どういう事です?」

 「あ、怒った? ごめんね。この依頼、知っていたら受けないからさ。大抵知らないで受けるんだよね。そして沼を苦労して渡ってキノコにたどり着いても奥のキノコ採れないでしょ? 採れた分だけとか、お金と時間をかけてになって次は受けてもらえない依頼だったからさ……」


 だまし討ちですか!


 「じゃ、★二つにしてよ!」

 「え……それは、ちょっと」


 ユージさんが交渉を始めたんですけど……。


 「★二つにしてくれたらこの仕事また受けるよ。やる人いないんだよね?」

 「え? マジで? ちょっと待ってて聞いて来るから」


 そう言って係りの人は奥に入って行った。


 「この世界って必要な依頼しかないって聞いたからさ」


 ユージさんがボソッと私に言った。

 ほどなくして係りの人は戻って来た。


 「条件付きで今回★二つに出来ます。この依頼はあなた方のギルド専用にして、年4回はこなして頂きます。勿論その時は、★は普通に一つ付きます。どうしますか?」


 私達はまた顔を見合わせた。そして頷く。

 この条件は、私達にすれば好条件です! 


 「その条件を飲みます!」


 ユージさんは、係りの人にそう返した。こうして★二つをゲットしたのでした。

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