第30話~経験値の増やし方

 「これ触る?」


 私がため息ばっかりついているからか、尻尾を見せてユージさんは言った。私の元気の元だと思っているのかも……。


 「……僕が描こうか? 下書きしてくれれば、それをなぞればいいよね? 確か魔法陣って描いた人のモノって聞いた事があるから、僕が描けば確率上がると思うよ。君よりはLUKあるハズだから。創造力は1000あるし……」


 あ、そう言う手もあるのね……。でもこの本っておじいちゃんが書いたモノだよね? だったとしたら私用に作ってくれた物のハズです。きっとこれらをこなしていけば、錬金術師になれる。その為に用意してくれた物……。

 でも失敗したらHP100減るんだよね。後4回失敗しただけで、私は死亡です。ポーションがあるけど、200しか回復しないですし。

 経験値は2000ちょいしかない。VITに振ったからね。これをLUKに振っても400しか増えない。確率は2%上がるだけです……か。


 「私は……耳がいいなぁ。そのケモミミが触りたい!」

 「うん。いいよ」


 屈んだユージさんの頭を私は触る。やっぱりケモミミって手触りいいですよね~。


 「私、良い事思いついた。経験値増やす為に歩き回る! 前に靴が魔具って話ししたでしょう? 一歩歩くごとに経験値が1増えるみたいなの。だから歩き回って経験値を稼いで、それをLUKに振って確率上げようかなって。私、LUKが長所だから上がりやすいし、いい考えだと思わない?」


 私はユージさんのケモミミをもふもふしながら話した。


 「うん……いいかも……」


 ちょっと色っぽい言い方でそう返ってきた。顔を見れば赤い。


 「大丈夫?」


 私は慌てて手を離すと、ユージさんは頷いた。


 「……大丈夫。どうせだから洞窟内見に行こうか」


 確かにただ歩き回るよりは効率的です。それに飽きそうだなって思っていたからちょうどいいわね。


 「ありがとう。元気出たよ。洞窟の中に行きましょう!」


 ユージさんは嬉しそうに頷いた。そしてこう言ったのです!


 「やっぱり君は、元気な方が可愛いよ。見ているこっちも元気がでる」


 これってお子ちゃまは元気が一番って事ですよね!?

 はぁ。いいです。それでユージさんの元気がでるのなら……。



 ◇



 私達は、臼以外を持って洞窟の中に足を踏み入れた。中はくねくねしているようで、洞窟の大きさを把握出来ません。


 「ねえ、LUKが長所って事は、短所あるよね? 短所って何? 因みに僕は長所も短所も作らなかったよ」


 歩きながらユージさんは聞いて来た。


 「うーんと。STRかな。それと……」

 「え?! STR!?」


 ユージさんに凄く驚かれました。これを短所って変なのかな?


 「君、戦闘する気まったくなかったんだね」

 「うん。だって、画面で見ていた敵がリアルに現れるんだよね? む、無理です。そんなのと戦うのは!」


 動物系ならまだ何とかなるけど、昆虫系の敵なら見るだけでも無理です! それに追いかけられると思うだけでもぞっとする。本当は攻撃するものだけど、私はきっと逃げ出します!


 「なるほど。言われれば確かにそうだね。リアルじゃないとわかっていても怖いよね」

 「想像しただけで鳥肌が……」

 「そこまで嫌なんだ」


 何故かクスッとユージさんが笑う。


 「まあ、蛇ですらダメだったから、この選択は合っているかもね。でも普通は、STRを短所には出来ないと思う。もしかして必要になるかもって思っちゃうからね」

 「そうなんだ。私、村人でまったりしようと思っていたんだよね。でも気が付いたら錬金術師になろうとしているよ。不思議だわ!」


 おじいちゃんに会ったからだと思うけど。でもこれはこれで結構楽しいからいいかも。自分のペースで誰にも文句言われないしね。


 「ほんと、君って前向きだね。さっきまで落ち込んでいたのに……」

 「すみません。単純で……」

 「そういう意味じゃないよ。傍にいて楽しいって事」


 そう思ってもらえるなら嬉しいかも。ケモミミも触らせてくれるし、婚約者がユージさんでよかった! まあ、本当に結婚するわけじゃないしね……。


 「そう言えば、今更なんだけど、魔石が入った水ってどうしたの? あの二人が現れて、すっかり忘れていたけど……」

 「あれは……飲みました。蛇を食べる時に……」

 「え!?」


 ユージさんは凄く驚いているけど、そうするしかなかった。だって、光る水よ。怪しさ満点じゃない。絶対興味を引くと思ったから、ユージさんのもこっそり私のコップに移して飲み干しました!


 「見つからない様に飲んでくれていたんだね。ごめん」

 「大丈夫よ。喉が熱かっただけで、体に害があるわけじゃないから」

 「うん。ありがとう」


 そう言って、ユージさんはほほ笑んだ。

 それから私達は、色々話し合いながら先に進んだ。

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