彼女がいない。
真神優貴
彼女がいない。①
ふと、辺りを見渡せば、傍にいたはずの彼女がいない。傍からいなくなっていた。
お世辞にも決して広いとは言えないワンルーム。生活に必要最低限のモノしか置かれていないが、今のところ不自由な思いをしたことはない。
そんなワンルームから、いつの間にか彼女の姿が消えていなくなっていた。
もしかしたら、僕だけが今の生活を不自由に思っていなくて、彼女は不自由に思っていたのかもしれない。
結果、彼女は我慢ならなくて実家に帰ったのかもしれない。……と、思ったのだが、玄関を覗き込んでそれは違うと確信した。
あるのだ。……玄関に、彼女が履いている桃色をしたハイヒールが。私は「この家から出ていません」と主張するかのように。
実家に帰ったというのは、流石に僕のはやとちりだったか。心の底に積もっていた鉄の錘が、一瞬にしてストンと消え失せる。
それなら洗面所で顔を洗ったり、歯を磨いているんだな。ひょこっと中を覗き込むけど、人の姿はない。
ああ、それなら台所で朝ご飯を作っているのかもしれない。あいにく、僕はお腹がいっぱいなので、彼女が作った朝食は食べられそうにないが……。
彼女なら笑って許してくれるだろう。
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