地方都市伝説

桜雪

第一話 ちんちんまめ

 小学高学年の頃だろう、まぁ5年生か…6年生。

『ちんちんまめ』という怪人がA山に現れるという話が広まった。


「草刈鎌を持ってチンチンよこせ~って追いかけてくるらしいよ」

「男子しか襲わないんだって」

「白髪のおじいちゃんみたいなんだって」


 そんな噂話が飛び交っていた。

「A山か…」

 小高い丘のような山、地元では公園などもあり人気の少ない場所ではない。

 そんなところに現れる『ちんちんまめ』

「なぜ、まめ?」


 とにかくヒマでしょうがない僕、当時から未確認生物やらUFOやら古代遺跡が大好物だった。


「行くか…」

 数名のバカ友と考えられる限りの武装をしてA山へ向かったのである。

 小学生の集められる物なんてたかが知れている。

 モデルガンとかカンシャク玉とかロケット花火…私は父親のナイフを持ち出していた。

 友人は学校の草刈鎌なども持ってくる、後はバットとかそんな適当な武装で怪人『ちんちんまめ』を捕獲しに向かったのだ。


 情報によると

 夕方出没する。

 男子を襲ってくる。


 じゃんけんで負けたH君が囮となってA山の道をウロウロする。

 草陰から左右に別れた僕達は、息を殺して怪人『ちんちんまめ』の出没を待っていた。


 放課後…休日…何日、そんなことをしていたのだろう…


 鎌でチンチンを切り落としに来るはずの『ちんちんまめ』は現れなかったのである。

 しだいに飽きてきて、最終的にはモデルガンでの撃ちあいになって、捜索は打ち切られた。


 未だに私は思うのだ…

『ちんちんまめ』じゃなくて…『ちんちんなめ』の間違いではなかったのかと…。


 おじいちゃんではなく痴女の噂だったのではなかろうか?


 そんなことを思いながら、筆を置いて、この都市伝説に幕を引きたい…合掌。

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