アップルパイ


おれは

アップルの

パイを

齧った

がりりっ

かなりの力を込めて

そして

勝利をした

調理をしたアップルのパイに

おれは勝利したのだった

やったあ

心の底からそう思えた

「やったぞー」

夕陽に向かって叫んだ

そうしたら警察官がやって来た

おれは言った

「やりましたよ刑事さん」

「誰が刑事さんだ」

ただのそこら辺を徘徊していたおやじだった

なんだ

だがおれがアップルのパイに勝った事実は揺らがない

十二連勝中だった

このぶんだとおれはもうじきアップルパイハンターの称号を得るだろう

「皿の上に今すぐそのアップルパイを置け………そしてここから秒速で立ち去れ、いいな? おれがいいと言うまでけして近付くんじゃないぞ、あとはこっちに任せておけ」

「あんた一人で大丈夫なのか?」

そのようなことを言われるだろう

おれは言うだろう

「………おれはいつだって独りでやってきたのさ」

バーボンを一口、含みアップルのパイと向き合う

生きるか死ぬかの真剣勝負

深い海の底のような沈黙

そして勝負は一瞬でつくだろう

おれはアップルのパイに飛び掛かった

対アップルパイ戦に於いて有効な手段はたった一つ

それは先手必勝なのだ

相手が先に動いたらもう勝ち目は無い

おれは両手でアップルのパイをがしっと掴みもう二度とその手を離さない

そして相手が反応する間も与えずそのままがぶりと口の中に放り込む

「………ふう」

危ないところだった

だがなんとか勝てた

おれは思った

絶世の美女が複数名、自分とやりたくって群がってきてもおかしくはない状況だと


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