チーズのサマー


外は

ベリーシャイン

或いは

ベリーベリーシャイン

おれは眠いけど

そんなことはあまり関係ない

この暑さとは

あまり関係なあーーーーーーい

「夏は………暑い…」

三十秒かけてそう言ってみた

御婦人たちは日傘を差していた

御婦人たちは日傘を差して崖から転落して死ななかった

クリームを顔面に塗りたくっていた

紫の外からくる光線

そいつからお肌を守るのだ

「お肌が焼けちゃう! 焦げちゃう!」

大忙し

おれは温度計に目をやる

わあーお

39度もありやがる

アスファルトの上を歩いている犬の肉球はもう我慢の限界

「やんなっちゃうワン!」

犬がそう言った

「ワンワン!」

どうやらおれの幻聴らしかった

犬が喋るわけないよな

熱で頭もついにやられたようだ

犬の名前はチーズ

御婦人がやたらと犬に話しかけていたのだ

「チーズちゃん、そんなに嬉しいの? チーズちゃんは夏が好きねえ」

まるで見当違い

チーズやんなっちゃう

っていうかおれをチーズって呼ぶなよって感じ

あっちい

サイダーのみてえ

かき氷くいてえ

シロップはイチゴ? メロン? レモン? ブルーオーシャンハワイ?

どれもいっしょじゃねえか!

どれも全部、無果汁じゃねえか!

おれは騙されねえぞ

人間どもは騙せてもこのチーズの鼻だけは誤魔化せねえ

チーズが言った

………ってまだチーズだったのかよ!

という読者の驚嘆

まあ、そういうことだな

チーズは氷に何も付けないで喰らう

その様はまさに野獣の如し


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