第29話 出発
俺は夜、目が覚めてしまったので新しい武器を作ることにした。素材はセリス大迷宮からでる時にたくさん回収していたので山ほどある。
「さーてと、何を作ろうかな?」
久しぶりにマイワールドに突入する。そこで俺は考え、ある物が思いついた。
「よし、手裏剣でも作るか!」
完全にただ使ってみたかっただけで、貴重な鉱石達を手裏剣に変えていく。だがただの手裏剣ではない。もちろん特殊な手裏剣だ。様々な鉱石を使っているので、能力もバラバラだ。
その手裏剣の種類が七種類、全部で七十枚の手裏剣が完成した。
一つ目は、炎を纏いながら飛ぶ手裏剣
二つ目は、雷を纏いながら飛ぶ手裏剣
三つ目は、氷を纏いながら飛ぶ手裏剣
四つ目は、爆発する手裏剣
五つ目は、消える手裏剣
六つ目は、自由自在に操れる手裏剣
七つ目は、空気を切り裂く手裏剣
それらを作るのに二時間ほどかかり、朝日がのぼり始めてきてしまった。すると、寝室から誰かがソウタのいる部屋に来た。
「おはよう、もう起きてたの?」
「セリスか、おはよう。夜に目が覚めたからそれからずっと起きてたんだ」
「そうなんだ」
セリスは眠そうに目をゴシゴシ擦りながらトイレのある方に向かっていった。
「なんだ、トイレに行きたくなって起きたのか」
「.....最低」
「なんでだよ...」
「レディーに向かって失礼だよ」
「どこにレディーがいるんだよ」
「もう知らない嫌い」
ただトイレに行きたくて起きたのに、ムカつくことを言われたのでつい冷たく言ってしまった。
そしてトイレから戻ってくるとソウタの顔色が悪かった。それが心配になったので声をかけてみる。
「どうしたの?」
「え?いや、だって、俺のこと、嫌いって、」
この男の子はそんなことで顔色が悪くなっていたのか、 と思うとなんだかおかしくて笑ってしまった。
「...なんで笑うんだよ」
「私がソウタのことを本気で嫌うわけないでしょ?それなのに本気で悩んじゃって、ふふっ、かわいい!」
そう言ってソウタに飛びつき抱きつくと、抱き返してくれた。
「もぉ〜、なんなんだよ、また怒らせたとおもったじゃねぇか」
「怒ったのは本当だよ」
「...ごめんなさい」
「ふふっ、よく出来ました」
ソウタの頭を撫でると恥ずかしそうにするので、ずっと撫でていると、首に何か違和感を感じた瞬間、ピリッ!とした痛みがした。
「っ!?何したの?」
「キスマークつけた」
「きす、まーく?」
「そうだ、知ってるか?」
するとセリスの顔がジワジワ赤くなりだし、ポカポカ殴られた。
「きゅ、急に何するの!?」
「すまん、どうしても我慢出来なくなったんだ」
そして「嫌だったか?」と聞くと、首を横に振り、
「.....恥ずかしかったの」
と顔を真っ赤にしながら言われた。その瞬間、ソウタの理性が吹き飛び、セリスを押し倒した。
「セリス、俺もう我慢できない」
「ふふっ、いいよ、きて」
そして、ソウタがセリスの服に手をかけた時、後ろからガサッ!という音とともに、「あっ!」という声が聞こえた。
「何してんだよ」
「え、えーとですね、トイレに行こうと思いまして、」
「それで?」
「そ、ソウタさんとセリスさんが何やら怪しいことをしていたので...」
「見ていたと?」
「...はい」
メイは顔を真っ赤にして凄く申し訳なさそうにしていて、ソウタとセリスはすっかり理性を取り戻し、先程の事を見られていたのかと思うと凄く恥ずかしくなっていた。
「ごめんなさい!」
「あ?あぁ、別にいいよ。そのかわりさっきの事は忘れてくれ...」
「忘れてね?」
「わかりました!」
メイが元気よく返事をしてくれたので安心する。これで「いいえ」などと答えていれば強行手段にでていたところだった。
「さてさて、今日もアクアシティを目指して歩きますか!」
「うん!」「はい!」
俺達が宿を出た時、女の人がこちらに向かって走ってきた。
「すみません!黒輝ソウタさんという方を知っていますか!?」
「聞いたことないな」
「そ、そうですか。ありがとうございます!」
そう言って女の人はまたどこかへ走り去っていった。
「何だったんだろうな」
「なんで普通に嘘ついてるんですか!?」
「だって面倒そうだっじゃないか」
「でもあの人凄く急いでましたよ!?」
「別にいいだろ?俺はこの世界のことに興味ないんだから」
「でもぉ...」
メイの気持ちも分かるが、誰彼構わずに構っているほど俺には余裕がない。それはヴァイスとの戦いで再確認したことだ。
「ねぇメイ、私達にみんなを助けれる程の力がある?」
「少しはあるとおもってます」
「そう。でもね、私達は万能じゃないし不死でもない。だからまた前みたいにソウタがボロボロになるかもしれないし、今度は私達が死ぬかもしれない。だから簡単に他人に構わないでほしい」
セリスがいつになく真剣に話してくれた。その真剣さがメイにも伝わったようで、頷いている。
「ありがとな、セリス」
「うん!」
「すみません。どうしてもあの人が友人に似ていたので無理を言いました。ごめんなさい」
「分かってくれたならいいぜ」
「はい...」
メイは理解はできてもやはり気になるみたいだ。しょうがないと言えばそれで済むのだが、このままではメイの心は晴れないだろう。
「気が変わった」
「え?」
「すまんセリス」
「ソウタが決めたことならいいよ」
「ありがとな」
俺はどこかへ行ってしまった女の人を追いかけると、すぐに見つかった。
「おい、あんた」
「え?私ですか?って、あ!さっきの人ですよね!?」
「そうだ」
「見つかりましたか!?」
「あぁ」
「ほ、本当ですか!?連れて来てください!!」
女の人のあまりの迫力につい後に引いてしまいそうになるが、なんとか踏みとどまる。
「俺だ」
「え?」
「黒輝ソウタは俺だ」
「はぁ...黒輝ソウタさんがあなたみたいな人なわけないでしょう!?」
何故か怒られたのかがわからないがとりあえず、この人はいったい黒輝ソウタという人物にどんなイメージを持っているのだろう?
そう気になったソウタは聞いてみることにした。
「なら、あんたが思う黒輝ソウタはどんな人なんだ?」
「それは、かっこよくて見た目ごつくて顔に傷があって髪は金色で背が凄く高くて王子様みたいな人です!」
「ちなみに、それは自分が考えたイメージか?」
「はい!ソウタさんは絶対にこのような人ですよ!」
この女の人は本気で言っている。何故分かるって?目が血走るほどの勢いで話しているからだ。
「そ、そうか。引き止めて悪かったな。ならその黒輝ソウタ君とやらを探してみてくれ」
「本当ですよ!もう邪魔しないでくださいね!」
少しイラッとしたが我慢し、セリス達の元に戻り、このことを話すと凄く笑われた。
「ごつい王子様になってくる...」
と拗ねたソウタがどこかへ歩き出したのでセリスとメイは必死に止め、なんとか慰めた。
「早くアクアシティに行こうぜ」
「そうですね!」
「メイはもう大丈夫?」
「はい!さっきの話を聞いたらバカらしくなりました!」
メイはすっかり気が晴れたようなのでよかった。これで心置き無く旅が出来るだろう。
「で、アクアシティまであとどれくらいなんだ?」
「えーっとね、たぶん三日ぐらいで着くと思うよ!」
「もうすぐだな」
「そうですね!」
「さて、じゃあ今度こそアクアシティ目指して行くぞー」
「「おぉー!」」
そして俺達は一日だけ滞在した街の名前を知ることなく、アクアシティを目指すのだった。
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