第24話 無事

私が目を覚ますと、見知らぬ家の中にいた。たぶんメイ達がここに運んで来てくれたんだなぁと思っていると、


「あ!セリスさん起きたんですね!」

「う、うん。ソウタは?」


聞きたくない、けど聞きたい。そんな気持ちが顔にすごくでている。


「俺ならここにいるぞ」

「!!!!!」


ガバッとセリスがソウタに抱きついた。


「よ、良かったよ〜。ぐす、死んじゃった、とおもったよ〜。ぐす、」

「心配かけたみたいだな」

「ホントだよ!バカ!」


そんなことを言われたが、セリスが喜んでいることが誰からでも分かるぐらい嬉しそうな顔をしている。俺が抱きしめ返すとセリスはだんだん気持ちが落ち着いてきたのか、抱きついたまま動かなくなった。


「あのー、私もいるんですが?」

「メイか。いつからいたんだ?」

「ソウタさんと一緒に来ましたよね!?」


俺とメイがそんなやり取りをしていると、セリスに、この三日間なにがあったのか聞かれた。


「俺がボロボロになってたのは知ってるんだろ?」

「うん。エルフの人達を守ったんだよね?」

「あぁ」

「どうして、守ってくれたんですか?」


メイが申し訳なさそうに聞いてきた。たぶん、救ってくれたのは嬉しいが、他人であるあなたがなぜ命がけで守ってくれたんですか?ということだろう。


「理由なんてねーよ」

「え?」


メイがキョトンとした顔で見てきた。何言ってんの?とでも思っているのだろうか?


「誰も見殺しになんてしない、俺は守れるものは守るって決めたからな」

「それが、自分の命を賭けることになってもですか?」

「言っただろ?守れるものは守る、それだけだ。コイツが最優先だけどな」


そう言ってセリスの頭を撫でた。すると、セリスは嬉しそうにしているが、注意してきた。


「もう無茶しないでね!すごく心配したんだから」

「悪いな。少しミスっただけだ」

「また無茶する気でしょ?」

「さぁな」


そう言って誤魔化すが、多分バレてんだろうなぁ。無茶でもしないとあいつには勝てないからな。


そんなことを思っていると、ぐぅぅぅぅ、という音が聞こえた。


すると、セリスの顔が赤くなっていく。


「今のセリスか?」

「なんで言うのぉぉぉぉ!?」

「ソウタさん!!デリカシー無さすぎですよ!!」


二人に凄く怒られた。女の子って難しいなぁ。


「腹が減ったんだろ?飯食いに行こうぜ」

「うぅ〜、行く。」


少し唸ってからから俺の手を掴んできた。相変わらず可愛いんだが、今手を握られるのはまずい。


「ソウタ、手、どうしたの?」


やっぱりバレてしまった。ヴァイスとの戦いで右手の骨が粉砕していたのだ。


ポーションを飲めばすぐに治ると思ったが、重症すぎて治りが遅いのだ。


「前の戦いで折れたんだよ。だからこっちの手を掴め」

「うん!」


そう言って左手を出すと元気よく握ってきた。


「こっちの手は大丈夫なんだね」

「あぁ、軽い骨折だったからすぐ治ったよ」

「じゃあ右手はすごい怪我をしたってことだよね?」


じとーって見てくる。そんな目で俺を見ないでくれ!


「ほ、ほら!飯!飯食いに行こう!」

「次、こんな怪我したら怒るからね」

「わかった」


セリスが凄く悲しそうな顔をして言ってくる。本当に俺のことを心配してくれているのがわかる。


俺って本当、バカだなぁ。彼女をこんなに心配させるなんて。父さんが知ったら殴られそうだ。


そんなことを考えながらセリスの手を握り、ご飯を食べにいった。


「また、私のこと忘れてますよね…ふふ、私ってこんなに影が薄いんですねぇ…ふふふ」


そんなメイの涙声は誰にも聞かれることはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る