(旧)運営のミスでVRMMOで最強になる(旧)
因幡 天兔
第1話 Magic&Sword Quest
Magic&Sword Quest(マジック&ソード クエスト)
通称、MSQ。プレイヤーたちが神の使者。天使の加護を受け、「理想郷エデン」を冒険の舞台とした、一週間ほど前に発売したばかりの最新VRMMOだ。ソフトは発売開始5分で売り切れたという。
プレイヤーは「天使の加護を受けた者」としてゲームの世界、理想郷「エデン」に降り立つ。理想郷というと、天使、不自由ない生活など、天国のようなイメージがあるが、世界観としてはそれほど他のVRMMOとかけ離れてはいない。普通に魔物は存在するし争いも起きる……らしい
らしいというのは、僕、神谷かみや 陸りくは、このMSQどころか、他のVRMMOもプレイしたことがまったくなかったからである。
VRMMO(バーチャル・リアリティ・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンラインゲーム)とは、要するにリアルな世界と変わらない仮想空間で行われる、大多人数による仮想空間ゲームだ。それくらいなら僕でもわかる。テレビで扱うほど有名だからな。
VRドライブというバーチャル空間にダイブするための機器(これは用途によってベッド型やシート型、ヘルメット型、ヘッドギア型といろいろある)を使い、電脳空間へと旅立てるのだ。
ここ数年でVR技術は驚異的な革新を遂げた。そこには医療や文学など様々。そして、遊戯で今1番の期待の新作ソフトが【マジック&ソードクエスト】だとか、あとはそんなテレビや雑誌などで見る一般的な知識しか知らないが。
というか、ゲーム自体をあまりやったこともないし。それでもVRゲームというものが世の中に浸透してきていることは知っている。
世間的には【ファイナルアドベンチャーオンライン】とか【スターナイトクエスト】というゲームが大人気らしい。【マジック&ソードクエスト】は新規参入のゲームメーカーが作った作品だが、かなり期待できる作品との噂だ。
僕が今まで住んでいたところはいわゆる田舎で、ゲームセンターのようなものなどは身近にはなかった。あったのはバッティングセンターなどだけだ。ゲームのハードを持っている友達なら数人いたが、それだって携帯ゲーム機が大半で、VR技術を使用したゲームなど誰一人持ってはいなかった。子供が持つには高価だしね。
インターネットでのゲームをするという手もあったが、僕の家(正確には伯父の家、母方の実家)のPCでは性能が低くて、とても快適にできる環境じゃなかった。
その僕が最新のVRドライブ(ヘッドギア型)と「MSQ」のパッケージを手にしている。これはまったくの偶然。でなければこんな最新型のVRドライブと人気のゲームを僕が買えるはずがない。これにはまぁ深いわけがあって……
────数日前────
「おめでとうございます!特賞新潟コシ〇カリ30キロです!」
え?30キロ?特賞?
────────────────────
ぼくは最寄り駅の中にあるショッピングモールに来ていた。そこで『今日三千円以上お買い上げのレシート1枚につき福引一回無料』と吹き抜けになっている北側エントランスの天井から約2階にかけて垂れ幕が下がっていた。今日は父が出張中だから一週間分の食材を買いに来ただけなのだが、「無料」という言葉に弱くつい3千円になるまで食材やらなんやらを買い込んでしまった。本当は1500円で足りる買い物だったんだが……
まぁこんなに予算オーバーな買い物をしてまで買ったからには何かしら当てないとな。
■特賞 お米コシヒ〇リ 30キロ
■1等 VRドライブ(ヘッドギア型)+ソフト
■2等 遊園地1日パス
■3等 ショッピングモール商品券
■ 4等 お菓子の詰め合わせ
■5等 ティッシュ
かなり豪華な品揃えだった。それに3等からの格差も激しいな。
特賞より1等の方がほしいな。どっちも当たるわけないけどさ。
「神様〜。僕なんでもいいです」
なんて言ったら、じゃあ欲しいものをあげようとか思うかな?
そんなことを思いつつ僕は福引のハンドルを回した。出てきた色は白。あーティッシュかな?そんなことを思うと
カランカランカラン
辺たりにハンドベルの音が反響する。
「大当たり〜。大当たり〜」
さっきのハンドベルの音と今の声で福引に並んでる人や周りの人の目まで僕に突き刺さる。
「おめでとうございます。特賞新潟コシ〇カリ30キロです!」
え?え〜〜〜!マジで当たっちゃったよ?夢じゃないよね?!
僕は自分の頬をつねってみた。
「イテテテテ」やっぱり夢じゃないや。
お米30キロは嬉しいんだけど家に貯め置きのお米がまだあったはずなんだよね。
「あー。1等が良かったな」
やっぱり遊ぶ環境が少ない僕からしたら食よりゲームの方が楽しいし欲しかったな。でもこのお米を売れば買えるかな?
そんなことを思いながら郵便の受け取り先などを紙に記入する。
「あのー。もし良かったら私の景品と交換しては頂けないでしょうか?あなたもこれが欲しいようですし」
声をかけてきたのは少しみすぼらしい格好をしているホームレスのような人だ。手には1等のVRゴーグルの箱を重そうに持っていた。
今なんていいました?交換して下さいかな?それならもちろん大歓迎だ!
「今なんて言いました?」
「もし良かったら私の景品と交換して頂けないですか?」
やっぱり交換だ。確かに僕はVRドライブが欲しいし、あのおじさんもお米が欲しいはずだ。それならwin-winでどちらも損はしないはずだし。
「良いですよ」
そう言うとおじさんは店の外に出て荷台を引いてやってきた。荷台には毛布や鍋などの生活に必要そうな物が所狭しと端に寄せられ、置かれていた。
まぁ見るからに怪しい物を引いて来ているので警備員も止めようとしたが、すぐに景品を取りに来たと分かったようで持ち場に戻って行った。それからおじさんはお米30キロを荷台に詰め込み、僕はVRドライブを貰って帰路へと着いた。
────────────────────────
まぁこんなこともあって今僕はVRドライブを手にしているわけだがほんとに良かったのだろうか?
僕は箱の包装紙を強引にぶち破り中の箱は丁寧に開けた。中は厚紙で仕切りを付けられ、VRドライブ(ヘッドギア型)が入っていた。ソフトはというと、箱の外側にテープで貼り付けられていた。なんか雑だな。
「これがVRか……」
手に取ってみると、見た目の割にはあまり重くはなかった。そりゃ頭に被せながらやるのだから重かったら大変なのだが。そんなことを考えながら黙々と付属の説明書を読み進め、VRドライブの設定を始めていく。
────数十分後────
やっと基本の設定は終わった。ここまでやるのに軽く10分は経っただろう。そんな普段は中々やる機会のない細かな作業を終え、最後の設定に移る。VRドライブを被るとゴーグルのガラス部分に時刻や日にちなどが右隅に表示されていた。
最後の設定は視野の感覚チェックと、指定脳波の検出だけのようだ。まずは視野の感覚チェックから。
左下の設定マークに目点を向けて『クリック』(これからは『押す』と言う)と思うと勝手に設定のオプションに飛んだ。凄いな。それから『基本設定』を押し、最終項目の視野の感覚チェックを押す。視野の感覚チェックは画面の四隅と真ん中に出てくるターゲットに視点を向け押すだけの操作確認だった。
もう一つの脳波の検査は専用のアプリを入れてやった。
これでひと通りの設定が終わった。長かったな。まずはトイレに行ってからそれからもう夕方だから夕飯を食べて寝る準備をしてからMSQはやることにしよう。僕はVRドライブを外しリビングに向かった。
────21時────
やっと風呂や洗濯も終わって、寝る準備も終えた。さて、これからMSQをやって見るかな。僕はVRドライブを装着し、MSQをインストールする。インストールを完了し剣と盾がクロスしているアイコンを押した。すると軽いゲーム内音楽が流れる。
【初めからニューゲーム】
【続きから】
【続きから】のメニューは黒くなっていて押せない。【初めからニューゲーム】を押す。すると目の前が白くなり意識が遠のいていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます