SS 情報への対価

「姫様、情報の対価をお支払いくださいな」


家庭教師の勉強を終えた私の元に突然メアリーがやって来てそう告げる。



対価…?なんだっけ?



こてんと首をかしげてみればひとつ心当たりがあったことを思い出す。

ジェード様に告白する前、私はジェード様に避けられていた。理由がわからなかった私はメアリーにその理由を調べるようにお願いしていたのだ。



日にちがたってしまっていたから忘れてたけどそういえばそんな事もあったなぁ……



あの時、メアリーはジェード様に避けられる原因を調べる代わりにひとつ私にお願いをしたのだ。

そしてそのお願いを私はまだ果たせていなかった。


「今日?今から?」


「えぇ、お願い致します」


そういってメアリーはどこに持っていたのか、私に侍女用の洋服を差し出す。

『この服を着た状態でお姉ちゃんと呼んでほしい』それが彼女のお願いだった。


幸い本日の予定はすべて終わっているし部屋の外にでなければ誰に見られる訳でもない。

こんな事が対価になるのだろうかと疑問だが本人が望むのだからきっといいのだろう。


深く考えずに私は渡された侍女用の服に着替える。

いざ着て見るとベースは侍女達が着ている服なのだが、フリルがあしらわれスカートの丈が少し短く改造されていた。

メイドカフェなどで見掛けるメイド服に近い気がする。

着替え終えた私はフリルつきのカチューシャをつけ、おかしな所はないか確認する為にその姿を鏡に映した。



おぉ、見習いメイドって感じね

ギャルゲーに居そう……やったことないけど



目の前にはギャルゲーの幼女枠で出てきそうな自分の姿があった。

簡単に襟やスカートを整えてメアリーの方を向くと、彼女は口許を押さえて頬を赤く染めながらぷるぷる震えている。


「ひ、姫様…さぁ、どうか『お姉ちゃん』とお呼びください!」


口許を抑えたままそう告げる声は少し裏返っている。



もしかしてメアリーは…妹が欲しかったのかしら?

一人っ子だと聞いたことがあるし、自分と揃いの格好ができる妹が欲しかったのかも…

そうと分かればここは思い切りサービスしてあげないとね!



私は気合いをいれるとメアリーに近付き、出来る限り精一杯の笑顔を浮かべる。


「メアリーお姉ちゃん!」


「はぁぁっ……尊いいいぃっ!姫様天使!」


荒ぶったメアリーに抱き締められた私はそのまま三十分、全く動くことができなかった。

ちょっとやりすぎたかもしれない。

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