第三章:吸血姫騒動篇
第75話 秋口のアルカ・ディアス
風が吹いている。その風は涼しく日中は過ごし易いが、逆に夜や早朝は冷えが強く人によっては苦手という、地球の日本で言えば秋に当たる季節。
二度の勇者、そして二度の魔王を経験した稀有な存在で、現在は魔人を名乗るサキトが、ヴォルスンドの勇者ジークフリートと姫クリームヒルト、その両名と再会を果たしてから既に一ヶ月が経過していた。
この一ヶ月の間、
これは魔石を始めとした鉱物の採掘、そしてそれに連なる生産力の向上、集落内のインフラ強化の結果であるのは明白だが、それだけではない。
集団のトップであるサキトが、集団の力の向上に対し、己の力を出し惜しむのを止めたからだ。
彼のスキル:《
だが、亜人の合流、そして一ヶ月前に起こったヴォルスンドの勇者たちとの邂逅がその考え方を変えさせていった。
アルカ・ディアスの衣食住に対し、サキトが本格的に手を加えたことでその様子は様変わりしていた。
それを一目で示せるものが、アルカ・ディアスの住人たちの服装だろう。
例えばヴォルスンドと比較しても、一般的な服装と比べて機能やデザインに特徴があり、デザインに関してはサキトやジンタロウの知識などが入った事で、現代の地球の人間が着ているようなものに近い形となっていた。
当然、亜人たちだけでなく魔人たちもそれを着ている者が多い。
よって、衣服にはもう一つの特徴が加えてある。それがサキトやゼルシアによる
当然、一定の魔法は防ぐことも可能で、加えて物理的な攻撃にも対応している。それは鉄の鎧などよりも強固な守りだ。
鉱物資源の確保、インフラ強化やサキトが本格的に自分の力を出す事などがアルカ・ディアスの成長に繋がった訳だが、まだ他にも要因はあった。
魔人たちは当然にして、エルフの血を受け継ぐアルドスの亜人たちがそれぞれの役割を持ち始めたことも大きい。
彼らは基本的に子どもたちばかりではあるのだが、それでも出来ることはあった。
十代前半の少年少女は彼らよりも幼い子どもたちの面倒を見たり、年上である者たちの手伝いをするようになっていた。そこには魔人たちと関わる事柄も多くあり、アルドスの子どもで魔人を怖がる者は既に居なかった。
そして、既に大人と言ってもよい二十を過ぎた者やそれに近い者たちはそれぞれが己の役割を見つけ、それをこなせるように励んでいた。
このようにサキトの下、魔人と亜人が協力してアルカ・ディアスは営まれていた。
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