120 今度は4人で秘宝探しに

 私は今、冒険者省のいつもの部屋に来ていた。

 そこには、私の担当になりつつあるロワイエさん(冒険者省のトップが担当ってどういうことだよ)は今日はいない。

 今日ここにいるには、ファース、グリー、レノだ。つまり、秘宝探しの仲間たちである。


「久しぶり、レノ」


 ファースやグリーとは、ちょいちょい会っていたが、レノと会うのは本当に久しぶりだ。レノは騎士団長なんだし、当然と言ったら当然なんだけど。


「久しぶりだな、エイリー。元気に……してたよなそりゃ」

「わかってるんだったら、最初から聞くなっ!」


 本当もう、失礼しちゃう。私だって元気じゃない時くらいあるよ。私をなんだと思ってるの?!


「エイリーはなんか、死んでも死ななそうじゃん?」

「私だって、普通の人間だよ!!」


 まあ、レベル300超えてるけどね。そんなのは関係ない。


「エイリーを普通って言ったら、皆普通になるわよ」

「確かに、普通ではないな」


 グリーとファースもうんうんと頷く。


「失礼なっ!」

「「「事実でしょ」」」

「至って私は普通の人間だよ!!」

「「「それは絶対違う」」」

「息ぴったりだなっ!」


 あまりにハモり過ぎているので、私は思わずツッコミを入れる。絶対こいつら確信犯だ。


「それに私から言わせてもらうと、あんたたちも普通の人間じゃないからね?」

「それはそうだろう」

「まあ、王家の血をひいてる以上、そうよね」

「何を当たり前のことを」


 自覚してるのかよ。いや自覚してなかったらかなりやばいんだけどさ。でも、面白くない。


「それでもエイリーに言われたくないよな」


 レノのトドメの一撃。


「なんなの?! 私に当たり強くない?! 久しぶりに会ったんだから、もっと優しくしてくれても良くない?!」


 私、悲しいよ?! 嫌われてるの?!


「そうか?」

「そうだよ!!」

「そうなのか……。それはそうとしてエイリー」

「あからさまな話題転換をありがとうっ!」


 なんなんだ、こいつ。反省する気も私と会話する気もないだろ。


「この間はありがとな」

「は?」

「いや、この間の秘宝探し行けなくてごめんな。騎士団の方が忙しくて」

「……本当に忙しかったんだ」

「はい?」


 私のぽそりと漏らした言葉に、なんのことだ?、と不思議そうな顔を浮かべるレノ。

 まさかの展開についていけない私もぽかんとする。え、この間ファースとふたりきりの宝探し、グリーと共犯じゃなかったの?

 ちらりとファースの方を見るが、彼もそのことを知らなかったご様子。


 え? 本当に、え?


「レノが忙しいのは事実よ?」

「つまり?」

「この間の計画は全てわたくしがひとりで立てましたの」


 自信満々に言う、グリー。


「レノが仕事でいないし、丁度いいって?」

「その通りよ」


 この女、策士だ……! きっちりとあの腹黒国王の血をひいてるよ……!

 あとは、『レノが行かないなら、わたくしも行かない』って考えもあるのかもしれない。


「とにかく、そろそろ本題に入らないか?」


 話が全く進んでないことに気がついたのか、はたまたこのことを追求されるのが嫌なのか、ファースは話を切り出した。


「それもそうだな」

「で? 今日はどうしたの、改まって集まって」


 私の問いに、ファースが真剣な表情で、


「王家の秘宝が全部見つかるそうなんだ」


 と答えた。


「全部? いっぺんに?」

「そう。場所も一緒で、にあるらしい」

「は? 魔境の森?」

「そうだ」

「魔境の森ってあの?!」

「そうだ」


 まじかよ、魔境の森かよ……。


 魔境の森というのは、名前の通り魔物がうじゃうじゃと生息する場所だ。下級魔物から上級魔物まで、沢山の魔物が存在して、アイオーン国内で死者が一番出る場所だ。

 私にとっちゃ、少しスリルのある場所で済むんだけど、あそこは少々めんどくさい。魔物が多いから、倒しても倒しても湧いてくるのだ。しつこい。


「そっかー。で、いつ行くの?」

「明日にでも」

「わかった。それにしても、全部手に入れられるかもしれないなんて、ラッキーだね」

「……そうだな」

「何その、びっくりしてるけどエイリーだから当然なのかって顔」

「いや、魔鏡の森も怖くないんだなぁ、と」


 レノがそういうと、ファースもグリーも首を縦に振った。


「え? だって、魔物がうじゃうじゃいるだけの森でしょ?」

「いや、そうだけどさ、まあいいや」

「こんなに頼もしい仲間がいて、嬉しいわ……」


 呆れ顔で、ファースとグリーが言う。

 なんなの? 私、思ったことしか言ってないんですけど?


「とりあえず明日なのね、わかった」

「よろしくな」

「うん、今度は逃がさないんだから!」


 こうして、私たちは大一番の勝負に挑むことになる。

 魔物がひしめく、魔境の森で。




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