第16話

「それにしても惜しかったわね、いい助手になると思ったのに」


 阪中が?と俺は階段を昇りながら聞いた。


「違うわよ。しゃべる猫!あたしが推理に困った時、そっと助言をくれたりとかしてくれそうじゃない」


 そういう推理小説もあったような気がするが、そうなるとお前より猫の方が賢いってことにならないか?


「細かいことにうるさいわね、大体あんたがもっとあたしをサポートしなさいよ」


 へいへいと適当に返事をしていると、階段の上に誰か立っていた。顔を見ると見知った顔で、今日は知り合いによく会うなぁとなどと思った。


「あ、涼宮さんだね。よかったぁ、誰もいないからどうしようかと思っちゃったよ」


「誰よあんた。依頼なら今日はもう終わりよ」


「違うよ、僕は仕事で来ただけ。こっちの方は速達だよ。今日中に届けてほしいんだって」


 さて、会話からもう分かったことだろうが、今目の前にいる奴は郵便配達人だ。


「お勤めごくろうさん、国木田」


「あれ、どうして僕の名前を知っているの」


 まあいいやと言いながらハルヒに手紙を渡し、国木田は帰っていった。


「あんたまさかあたしのBSIを勝手に使ってるんじゃないでしょうね」


 ハルヒ、おまえSOS団以外にも何かやってんのか? ジト目で俺を睨みながら、ハルヒは速達で届いた方の手紙の封を切り読みはじめた。


「ふざけんな!!!!!!!」


「うぉっ!?」


 ハルヒは叫ぶが早いか光速の速さで俺の横を駆け抜けて階段を駆け下りていった。なんなんだいったい。追いかけてもよかったが、たぶん追いつけないし、今日は街中を歩き回っていたのでくたくただったので、俺は自分のベッドに倒れた。俺の意識はたちまち夢うつつのはざまへと落ちていった。


「ずいぶんと疲れておるようだが」


 ああ、今日はくたくたに疲れたよ。


「私はすこぶる元気だ。旧知の友との再会を果たしこの町を案内してもらった」


 そうなのか。よかったな。


「ところで、妹君は元気かね」


 俺の意識が一気に覚醒した。


「誰だ!!!どこにいる!!!」


「『誰』というのは我と他を区別をするためのつけられた記号のことだろうか。だとすれば私にも名前と呼ばれるものはある」


 ハルヒのベッドがもぞもぞっと動き、ちょこんと出てきたのは今日俺たちが探していたわが飼い猫、シャミセンだった。

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