懐店五分後のゲームセンター

@riyo_2525

懐店五分後のゲームセンター内

.





僕の目の前の画面に突如として現れた青黒いK.O.の文字


対して隣のエルの画面にはWINNER!と金色に輝いた文字




「ちぇっ、また負けたよ。クソつまんないなこのゲーム。」



そう言って僕は手をグーの形にして、憎たらしい画面目掛けて大きく振りかぶった。



パンッ!と音を立てて破られた画面の液晶はパラパラと力無く床に落ちていく



「ただ単に、ジェンの腕がないだけよ。それにイラついたら何でも壊す癖そろそろ直しなさいよね。」


「うるさいなぁ、分かってるよ。」




軽く血の流れた手を少し前に赤く色付けてしまった洋服で拭き取り、最後のゲーム台へ。



「ここに来た時は驚いたよね。初めて聞く言語でさ」


「日本語って言うらしいわね」


「そうなんだ、まぁ使う人はもういないから覚えなくていいでしょ」



最後のゲームは一人用だった。


座られる前にその席に座ると、エルは皮肉を零し項垂れた。



「次私がやるんだから苛ついて壊したりしないでよね。」


「はは、どうだろうね。」



この先起こる事なんて神のみぞ知る事だ。


神より位の低い僕らは知る由もない。



落ちていた100と書かれたコインをすっぽりと入る窪みに入れる


チャリン、と台の中でコインが跳ねる音がすると、男二人が構いあっている画面に切り替わった



3.2.1.のカウントダウンを待つ間にエルが口を開いた。




「____今回も最悪だったわね」



そう言った彼女の瞳は恐らく失意の大雨で命火は絶たれ、死んでいるだろう



「そうだね、僕も流石に今回は不愉快だった」



FIGHT!という文字と同時に操作を知らない僕は適当にレバーやボタンを押しまくった。



「常日頃、テレビじゃあ殺人、誘拐、窃盗、恐喝、詐欺、暴行、密輸。」


「若者の集まる大都会なんかじゃ地面にゴミが溜まりすぎて汚かったしね

それにこの世に愛想を尽かして自ら命を絶つ人間だっているんだから。」



赤ボタンで攻撃を繰り出す、と分かりひたすら連打する。




すると相手の緑色だったゲージは黄色、そして赤色に変色して徐々に短くなっている。


それに伴って相手は顔を青ざめ、苦しんでいるからもう死は近いのだろう。





「これは天罰だよ。この国は粗大ゴミ同然の病人だらけ。


ゴミは、しっかり燃やして処分しないと。」



そんな死亡寸前の相手の頭目掛け、僕は赤ボタンで踏み潰した。




.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る