第29話 予想ってあくまでも予想

「やっと着いたー!」

「つかれたー…」

「お疲れ様!2番目よ!」


 続いてリーシュちゃんとガウ。

 クロたちかと思ったら違った。


「くっそー!2番だったかー!」

「まあ俺とシロだからな。そっちこそ早かったけど」

「ああ。俺が前にでてリーシュちゃんがどうすればいいのか教えてくれたんだ」

「要するに囮か」

「…たしかにそう聞こえる」

「なにかしら?」

「「いいえ、なんでも」」


 疑いの目で見たら威圧の目で返された。

 あれは勝てねぇ…。

 そんな目してた。


「次は誰だろう?」

「クロたちだと思うけどなあ」

「じゃあ俺はラウにする!」


 1番候補だったクロたちが来ないから次は来るでしょ。

 悪魔化できなくても元々強いし。


*


「くっ!3番目でありんすか」

「それでも早いよー」

「お疲れ!ラウ!」

「ガウ!それにジルくんも!早いねー」

「う、うん…」


 あ、あれ?

 クロさん?

 まさか手を抜いているのでは?


*


「やっと着いたぁ…」

「「疲れたぁ…」」

「お疲れ様!これで全員ね!」


 まさかの最後。

 こういうの苦手だったのか?

 ボロボロだけど。


「クロ、何かあったの?」

「んっ…」

「なにこれ?」

「見ればわかるわ」


 紙を持っていたらしくそれを渡された。

 何が書かれているんだ?


「おいおい…途中で気づこうよ」

「だって…分からなかったんだもん…」

「ふつー気づかないよねー」

「気づかない気づかない」


 紙にはビッシリとマッピングした跡があった。

 何周したんだっていうレベル。

 これ、ところどころ全力で走ったりしてたでしょ。


「みんなお疲れ様!」

「いつもよりみんなのほうが早いわ」

「どのぐらいはやいのー?」

「いつもはギブアップする組が出るんだけど今年はいなかったね!」

「あの魔法はなかなか気づかないものよ。シャルちゃんたちが一番早いぐらいなのがいつもどおりだわ」


 優等生ばかりってわけだ。

 これは鼻が高いな。


「あっ!そういえば壊しちゃったんだけど…」

「それなら問題ないよ!元々壊すと思ってたし!」

「あとで私たちが直すわ」


 よかったよかった。

 これで壊しちゃダメ!とかだったら真っ青になっていたよ。


「あの魔法は迷宮生成ラビリンス!私とシルヴィ先生で一緒に使った魔法よ!」

「この魔法は規模が大きいから1人は書きながらもう1人は1文字1文字に魔力を込めていくのよ」

「そうするとトラップ式魔法の完成となるのよ!」


 単純なようで実は難しいらしい。

 簡単なトラップぐらいなら1人でもよさそうみたい。


「じゃあ少し早いけど帰りますか!」

「「「「「はーい!」」」」」


*


「何しているの?」

「卵温めているの!」


 夕食後。

 部屋に戻るなりシロは卵へ真っすぐ向かっていった。


「そんなに頑張ってすぐには生まれないよ?」

「あっ!動いた!」

「うそ!?」


 フラグ回収早い!

 えっ!?

 まさか本当にもう生まれるの!?


「ん~、少し動いただけだったみたーい」

「びっくりした…」


 心臓に悪いぞ…。

 シロだけじゃなくて俺も気になっているんだから。


「でも動いたってことはそろそろかもね」

「まだかなー?まだかなー?」

「ほら、温めるのもいいけど寝るよ」

「はーい!」


*


 あれから数日。

 ダンジョンへ行く日になった。


 あの後は何回かまた練習をしていた。

 部屋が違うだけで少しギミックが違っていた。

 最後も迷子になる魔法ではなかった。

閉じ込めたり、上下逆さまになったり、真っ暗で何も見えなかったり。


 もうこれで大丈夫とも言っていた。

 これなら今日も行けそうだな。


「じゃあ行きましょうか!」

「「「「「おー!!」」」」」


 何回も来れるということで近くと言えば近くにある。

 どっちかというとここにダンジョンがあるから学校をつくった感じみたい。


「みんなしっかり本は持って来たよね?」

「「「「「もちろん!」」」」」

「よしよし!」

「今回はみんなで、それ以降は必ず2人以上でいくこと」

「行くのは前言った通り午後ね!」

「なんで全員でありんすか?」

「まだこの書き方分からないでしょ?」

「あっ…」

「そういうこと!さっそく行こうか!」

「「「「はーい!!」」」」」


*


「実はこの本には仕掛けがあってねー。昨日までのダンジョンのトラップ覚えている?」

「どこかに文字を書いていた魔法?」

「そうそう!その本はそれと似ている魔法がついているの!」

「どこだろう?」


 あった。

 けどこれはなんていう魔法なんだろう?


「それは便利なことに魔力を込めていれば自動で書いてくれるものよ」

「ただ魔力を込め続けないといけないし、書くものが近くにないといけないの」

「しまったままじゃダメなの?」

「しまったままにするなら書くページにペンを挟めばいいわ」

「層を降りるときは注意することね!」


 ほとんど自動でマッピングしてくれるってことか。

 ゲームと違うとしたら魔力が減りつつ少し手間があるぐらい。


「これってオレでもできるの?」

「もちろん!今までやった新しい魔法を覚えるのとは違うからね!」

「試しに最初のページにペンを置いて魔力を流してみて」


 言われたままペンを置いた。

 どれぐらい魔力を流せばいいのか分からないけど


「「「「おー!!」」」」」


 自動でスラスラ書かれていく。

 と言っても入ってすぐなので書かれたのは少しだけだった。


「とまあこんな感じで書かれるわ」

「あとはみんなで進んでいってね!私たちは後ろにいるから!」

「っと、これを渡し忘れたわ」


 そういうとみんなに一つずつ何か渡された。

 きれいな石?クリスタルなのか?


「それは緊急用の脱出用アイテムね。危ないと思ったら地面にたたきつければいいわ」

「でも今日は私たちがいるから大丈夫!たぶんつかわないわ!」


 これならとっさに使えるね。

 魔法を使うわけじゃないから魔力切れの心配もいらない。

 おまけにコンパクト!運びやすい!

 テレビで紹介されたら買っちゃいそうだわ。


「ガウくんはこれね」

「ありがとー!」

「どういたしまして!じゃあみんな頑張ってね!」

「「透明人間インビジブル!」」

「きえたー!」


 透明人間ってことは後ろから見るだけってことなのか。

 それより透明人間だって?

 そんな、夢みたいな魔法が…!


「ジルくん、ニヤついているけど。まさか!」

「えっ!なに?別に透明人間とか考えてないけど」

「…えっち」


 …。

 俺が悪かったです。

 浅はかな考えで申し訳ありません。


「でも一回ぐらい考えたくなるもん。男だもん」

「ジルーどうしたの?」

「リーシュちゃんにいじめられた…」

「ほんとー?」

「シロちゃん、ちょっと耳かして」


 ん?なにやらごにょごにょ言っているけど。

 何伝えているんだ?


「…ジルさいてー」

「なんで!?」

「下心を持った結果よ」


 どうやら味方はいなかったようだ。

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