オカマ上司の恋人

饕餮

圭視点

Earthquake

 小さいころから――

 それこそ、幼稚園くらいのころから代わり映えしない、いつものメンバー、いつものクラスメート。

 有名私立のエスカレーターの学校。


 ――とかでは、もちろんなく。


 狭い地域の、長閑な空間に於いての、良くも悪くも代わり映えしないメンバー。


 けれど、そんな日常は一人の人間の登場により覆される。


 頭脳明晰、容姿端麗、掃き溜めに鶴。

 そんな言葉がぴったりと当てはまる存在。


 それが彼だった。

 誰もがその人に夢中になった。

 その人の気を引こうとした。

 かくいう私もその一人だった。

 けれど、ことごとく邪魔をする人物によって、話すことはおろか、近づくこともできなかった。


 いえ、一度だけチャンスはあった。偶然にも遭遇したそのチャンスを生かそうと、頑張ってその人のあとを追いかけてみたけれど……。


『貴方が好きなんだ……』


 両手を強く握りしめ、可愛く上目遣いで見上げる人物が、その人に告白しているのが聞こえ、硬直する。



 ――よく知ってる声で、ことごとく私の邪魔をした人物の声だった。



 その人の答えを聞きたくなくて、逃げるようにその場を離れたのに……。


『……俺もだ』


 結局は風に乗って、聞きたくもないその人の答えが聞こえてしまった。




 告白をしたのは、あらゆる全てを両親から良いとこ取りをした二卵性の双子の弟、羽多野はたの りつ


 告白されたそんな彼の名は、小田桐おだぎり 政行まさゆき



 リアルBLを目の当たりにし、なけなしの憧れと仄かな恋心が見事に玉砕し、いろいろな意味で精神的ダメージを負ったのは、全てが十人並みの私が十五の時のことだった。


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