2001年9月4日(火)
昨日、私はキキラと再会した。
彼女は――彼女はなんと、夏休み中に家出をしてから、ずっと学校で寝泊まりしていた、という。
食事は差し入れをもらったり、自分で近くの店に買いに行ったり。お風呂は水泳部のシャワーを借りていたらしい。
だけど、そういう生活がまともに成り立っていたのは8月下旬まで。
8月下旬になると、キキラは水泳部に顔を出さなくなった。水泳部の生徒は、キキラは家に戻ったのだと思っていた。
しかし、違った。
キキラは学校の屋上へと続く踊り場に、ずっといたようなのである。
それも――明らかに正気ではない状態で。
「みなもッチーーーーーーーーーーーーーーー。アーマガセ! アーマガセが! ああああああああああああああああ、ヴああああああああ」
新学期になり、登校してきた生徒に発見されたキキラは――
目が、正気じゃなかった。血走った眼差し、ぼさぼさの髪、どす黒い肌。
これが快活で、流行に敏感だった山本キキラかと思うほど、その様子は普通ではなかった。
「みぃなもぉっち。どこ、どこ、どこいっとったん。アーマガセが。ハセガワが、もう、もう、うちもぉ、どうかぁ、どげか、しぃしぃてぇええええ」
「キキラ、しっかりして! 心をしっかり持つのよ、キキラ!」
「無理やあああああ。アーマガセがおらん、アーマガセが。うちのお兄ちゃんが、どうかなって、もう、うちぃ、無理やあん。無理い。なんでこんなことになっとるんよお、なぁんで、ぶう」
天ヶ瀬くんが、お兄ちゃん?
なにを言っているのかよく分からない。
やがてキキラはやってきた救急車によって病院へと運ばれた。
ここまでが昨日の出来事だ。
キキラ……。
天ヶ瀬くんが殺されて、ああなってしまったの?
それとも、また、他になにか……?
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