2001年8月30日(木)

 天ヶ瀬くんのお母さんと会って、彼の部屋に入った。

 しばらく引きこもっていたせいだろうか、中は汚れていた。

 六畳間の上に薄汚れた布団。雑誌や漫画が乱雑に散らばっていて、整頓されているとは言いがたい。


 そんな中、私は彼の日記を見つけた。

 そして、お母さんから許可をいただいて、日記をお借りし――悪いとは思いながらも、中を見てしまった。




 天ヶ瀬くん。

 あなたはやっぱり若菜が好きだったのね。

 知っていた。知っていたよ。ずっと前から。それでも私、あなたのことが好きだったのよ。


 日記は、もしかしたら事件解決の鍵になるかもしれないと思ったけれど、新しい情報は残念ながらあまり得られなかった。ただ、天ヶ瀬くんが彼なりに事件を解明しようとしていたことや、あの木戸女史が彼にも接触したこと、そして私やキキラとも会おうとしていたことが分かった。悲しいくらいすれ違いを続けていたのね、私たち。――携帯電話が壊れなければ、もっと早く修理か買い替えをしていれば、こんなことにはならなかったのに。


 悔やんでも悔やみきれない。

 天ヶ瀬くん。……あなたと強引にでも会うべきだった。もっと早く。もっと先に……。

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