2001年8月5日(日)
普通じゃない。
絶対に普通じゃない。
私たちのグループから、ふたりも死者が出るなんて。
狙われているのは私たちなの? なぜ? どうして?
とにかく身を守らなければいけない。
みんなに注意を呼びかけないと。
携帯は故障中なので、自宅の電話を使って、天ヶ瀬くんの家に電話をした。しかし電話には誰も出なかった。何度か、かけたのだけれど、いつも誰も電話に出ない。どういうことよ……。
キキラの家に電話をすると、荒っぽい声の男性が出た。
彼女のお父さんらしい。そしてお父さんが言うには、キキラは数日前から家出をしていて不在だという。
不在? こんなときに、あの子はどうして……。キキラの行動も謎だ。長谷川くんといいキキラといい、いったいみんな、なにをしているの!?
安愚楽くんは電話に出た。
そして、お互いに身の安全を考えることを確認し合う。
それから、私は工藤教諭と長谷川くんのことを伝えた。
安愚楽くんは、何度も何度もうなり声をあげ、奇妙だ、不思議だ、と繰り返した。
そして――彼は言った。
「僕らのグループが狙われているとしたら、きっとなにか理由があるはずだ。心当たりはないかい?」
「そんなもの……思いつかないわ」
「そうか……。……こういうとき、日記でも書いていれば、過去のことを振り返られるんだけど」
その言葉で、私は自分の日記を読み返した。
なにかヒントがあるかもしれない。事件についてのヒントが、私たちのこれまでの行いのどこかに!
そして――
事件についてかどうかは分からないが、しかし確かに、過去に連なるヒントのひとつはあったのだ。
7月13日の日記。……私は、北条凛の卒業文集を図書室から借りて、コピーをしていたのだ。
これまで完全に忘れていた。私は自分でも気が付かないうちに、14年前、すなわち第2の事件の被害者が、高校時代に書いた文章を手に入れていたことになる!
この文章は、事件に関係があるのかしら……?
(筆者注・再び北条凛の卒業文集の文章が、コピーされて、貼り付けられている)
『将来の夢』 北条凛
ワタシの夢はただひとつ、アヤツを今後も苦しめていくこと。
ああ思えば。
世界のどこより純粋で、宇宙のだれよりも綺麗なワタシ。
そんなワタシがダレよりも愛したあのひと。好きで好きでタマラナイ。
あのひとと愛を語り合うことができたのなら、もうそれだけで死んでもイイ。
ああ、だけど、あのひとはもうワタシの前にはいないもの。
アヤツが消してしまったんだもの。あの愚かなヒト。ワタシの大事なヒトを消してしまったアヤツ。
悲しくて悲しくてカナシクテアアアーーーー。いまでもこのムネが張り裂けそうなクライ。
ワタシは知っている。
アヤツが消した愛するあのヒト。
ダレも知らなくてもワタシは知っている。
だけど警サツには言わないの。だってアヤツはあのヒトのLOVEだもの。あんなヤツでもLOVEだもの。
だからワタシは言えないの。ワタシにできたのはただひとつ。あのひとのことをアヤツに教えた。教えてヤッタ。
ふるえるがいい。
おののくがいい。
アヤツの心が消えていくのがとても楽しい。
アヤツは一生ああして生きるべき。ワタシのLOVEを壊したのだから。
ワタシの夢は、ワタシの夢は、ずっとずっとこの場所にいて、アヤツを壊していき続けること。
それがワタシの純愛を奪った報いだと知れ。
アヤツゥ。
悲しいのヨ。
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