青い夏

しゃの

第1話

「ねぇ、一緒に花火大会行かない?」


「ごめんね!もう一緒に行く人決まってるの。また他ので誘って!」


そう言って断った相手が去るのをを見ながら椎菜は落ち込んだ。

椎菜の花火大会への誘いを断った人数の記録が更新されたのだ。


「5人目……。」



今週の金曜日、近くでかなり大きい花火大会が開催される。


そして、今日は火曜日。

あと3日で相手を探さなくてはいけない。




「椎菜、どーだった?振られた?」


椎菜の悪友、加奈と奏太がニヤニヤしながら聞いてくる。



「ダメだった。もうみんな、相手決まってるって……。」



本当は、椎菜は加奈と花火大会を周るはずだった。しかし、加奈に恋人が出来てしまった。彼氏と花火を見たいと言えずにいる加奈の気持ちを組み、椎菜から約束を破棄した。

結果、椎菜は花火大会を一緒に周る相手を必死で探す羽目になっていた。



「もういっそ、花火大会なんて行かなきゃいいじゃん。 なんでそんなに行きたいんだよ?」



不思議そうに聞く奏太に加奈と椎菜はありえないという顔をする。



「何言ってんの!? 私たち高2なんだよ?」


「そうだよ! 来年は受験だから今年は絶対行きたいの! ていうか、奏太が花火大会行くの付き合ってよ!」


「嫌だよ、めんどくさい。」


「はい、6人目ー!」


奏太は誘いを即答で拒否する。

これでまた記録が更新された。


「去年は一緒に行ったじゃん!」


「あれはお前らが強引に連れてっただけだろ……。」


「むーー! もういい、他のクラスの人にも聞いてくる!」


そう言って、椎菜は廊下に走っていった。



「別に花火大会一回くらい行かなくても良くね?」


「あほ。この夏休みは平成最後の夏なんだよ? 少しでも青春したいじゃん。」


「そーゆーもんか?」


「高校生なんてそーゆーもんだよ。」



廊下にいる椎菜を見つめていた奏太に加奈は聞く。



「ねえ、椎菜と一緒に行きたくない理由って本当にめんどくさいだけ?」


「……加奈には関係ないだろ。」


「聞いたらまずいことでもあるの?」


加奈にイラついたような視線を向けられ、奏太はため息をついた。



「……俺のこと全く眼中にない女と花火見たって虚しいだけだろ。」


「何それ、逃げてるだけじゃん。」


加奈の言葉に、奏太は黙る。


奏太に続いて加奈もため息をつく。



「あのね、私は椎菜だけじゃなくて奏太の親友でもあるつもりなんだけど。奏太の応援もさせてよ?」


「……今の関係が壊れるだけだろ。」


そう言って、奏太も教室を出て行く。



「……もう昼休み終わるよ?」



「あいつを回収してくる。」




1人教室に残った加奈は、奏太の背中を目で追い、誰に言うわけでもなく愚痴をこぼした。



「……早く気づきなよ、椎菜のバカ。」



昼休み終了のチャイムが鳴った。

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